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東大・早野論文への科学者の反論(1)

東大・早野教授らが”福島の子ども達の内部被曝は無かった”
とする論文に対し、内部被曝問題を研究している科学者や医師
そして市民から反論意見が出ている。

長文なので2回に分け掲載。今回はその第1回目。  
全体の構成は木村 知医師が纏めたもの。


東大・早野論文への科学者の反論(2)は以下ご覧ください
http://nimosaku.blog.so-net.ne.jp/2013-06-03


『「福島県内における大規模な内部被ばく調査の結果ー福島第一原発事故7ー20ヶ月後の
成人および子供の放射性セシウムの体内量ー」(早野氏論文)に対する公開質問』


木村 知、 田口茂、 竹野内真理、松井英介、 矢ケ崎克馬、肥田舜太郎


 2013年4月11日、東大の早野龍五教授らにより、
「福島県内における大規模な内部被ばく調査の結果ー福島第一原発事故7ー20ヶ月後の成人および子供の放射性セシウムの体内量ー」
https://docs.google.com/file/d/0Byf-QYeE0N7pTWFyRnVhMnhZNmM/preview?pli=1
という論文(以下「早野氏論文」)が発表されました。

 この論文には、ひらた中央病院で行われたホールボディカウンタ(WBC)検査においては、チェルノブイリ原発事故により得られた知見から予測されたほどの内部被ばくが認められなかった、という調査結果がまとめられています。

 また論文の発表を受け、直後から多くのメディアによって一斉に、「子どもの被ばく『ゼロ』」、「セシウム検出されず」、「99%出ず」、「内部被曝1%」、「内部被ばく極小」などとの見出しを掲げた記事が出されました。
 さらに、この論文を受けて発信された、「福島県内の子どもの内部被ばく検出人数はゼロ 国内から初、食事による内部被ばく影響論文」(ダイヤモンドオンライン)という記事において、論文筆頭執筆者の早野教授は、 「福島県内の土壌の汚染から危惧されていた内部被ばくのレベルよりも、住民の実際の内部被ばくの水準はかけ離れて低く、健康に影響がでる値では到底ない」と述べ、この記事の執筆者も、「これらの結果から何がわかるのか。

放射性物質に汚染されている食品を定常的に摂取し続けていないと内部被ばくの数値が上がることはない。原発事故後、土壌の放射性物質汚染の高い地域で流通している食物は、ほとんど汚染が無かったということが、改めて実証されたということだ」などと述べています。

 実際の「早野氏論文」を読むことなく、これらメディアが報じた記事のみを読んだ多くの国民は、おそらく、福島県内に留まっている住民の方々の内部被ばくが少なかったことに安堵したと同時に、「原発事故は過酷だったが、その放射能汚染による実害は、心配するほどのものではなかったのだ」とか「事故後行われた政府による対策は、旧ソ連と比較して優れたもの、適切だったものと評価できるのだ」と感じてしまったに違いありません。

 もちろん、住民の方々にセシウムによる多量の内部被ばくがないのであれば、それは非常に良い情報であると言えるでしょう。
しかし、このWBC検査自体が、内部被ばくの「実態」を正確に評価するに耐えるものではなく、もちろん「安全」を担保し得るものでもないことは、内部被ばくの研究者の間では「常識」です。


 また、早野教授は「健康に影響がでる値では到底ない」などと断言してしまっておられますが、被ばくによる健康影響に「安全閾値」など存在しないことは、放射線防護における国際的コンセンサスであり、これも「常識」です。この国際的コンセンサスや「常識」を一切無視した、このような発言を、多くの国民が目にするメディアで発信することは、国民への「正しい知識」を広める責任を負う専門家の言動として、疑問を感じずにはいられないものであります。

 TwitterやFacebook、一部ブログなどでは、この「早野氏論文」とその後の報道、さらにその報道を受けた後の、論文執筆関係者らの言動や一般市民の反応などについて、上記のような問題点や疑問点を指摘する声が多数上がっていますが、かたや国際的に発表された論文であり、かたや一般市民がネット環境のなかで個人的、散発的に発信しているものであるため、研究者と一般市民のコミュニケーションが取れておらず、なかなか双方向の有意義な議論に発展していない状況です。

 もちろん国際的な学術誌も重要なのですが、それは一般市民にとってはアクセスしにくい「場」であり、またそれらがメディアにより一般市民に広められる際には、今回の「早野氏論文」の報じられ方を見ても明らかなように、バイアスがかかったり、脚色されるなどして、一般市民がミスリーディングされてしまう危険性があります。

そこで今回私たちは、この「早野氏論文」および現在行われている住民に対する内部被ばく調査活動に関しての疑問点や問題点を、専門家とより多くの一般市民が「公開のネット環境」という「場」において議論可能となることを目的として、以下の方々からの声を「公開質問」という形で、みなさまへ直接お届け致します。



ーーー
【早野龍五教授論文に対する意見】
田口茂 (福島県二本松市)

1) ベラルーシ中央科学研究所所長のバンダジェフスキー博士は10Bq/kg位の体内汚染から心電図異常もあるとしている。今回使用したWBCの検出限界値はセシウム134及び137それぞれ300ベクレル/Bodyと大きく、対象とした4歳児の平均体重は16kg、小学1年生(6歳児)の平均体重は21kgであり、これらに対する検出限界値はそれぞれ18.75ベクレル/kg、14.3ベクレル/kgとなり、検出誤差を20%程度と仮定すれば4歳児は19.13ベクレル/kg以下なら検出されず、内部被ばくが無かった事として見過ごされてしまう。

 特に子供の体に入ったセシウムは、心臓に凝縮されて心筋や血管の障害につながり、心筋細胞はほとんど分裂しないため放射能が蓄積しやすいとされ、子供の心臓は全身平均の10倍以上ということもあるとされている。
 被曝の影響は、胎児や小さい子供に大きく、この検査方法では、子どもの年齢が低く体重が少ないほど、検出限界によって内部被曝量は隠され、「検出されなかった」となってしまい大きな問題。

2) 上記1) の理由で、『内部被ばくのレベルが極めて低い事が示された』と結論づける事は、将来ふくしま県民に健康被害がでた場合には、『放射線の影響は考えにくい』とする国や東電を有利にするものであり、内部被ばくの矮小化・隠ぺいと言わざるをえない。

3) 中通り、浜通り地域で比較的汚染度の低い三春町の小・中学生を対象とし、『サンプリングバイアスが無い状況で、内部被ばくが非常に低く抑えられた』との結論は、あたかも福島県全域が低いといった印象を持たせ、問題が多く、国の子ども被災者支援法案や内部被ばくへの対応に影響を与えかねず、又国の東電の損害賠償の決定を被害者に不利になるような状況を与える事となり問題が多い。
 
4) 『15才以下の小児では0.09%と大人よりも内部被ばくが少ない』との結論は、体重当たりで比較すれば必ずしも正しくない。

5) 検査対象者の居住者分布は最大でも250kBq/m2と、比較的中程度の汚染地域までを対象としており、高汚染地域(~3000kベクレル)の住民を対象とはしていず、福島県全体が、内部被ばくが無かったかのような結論づけには問題が多い。

6) ほとんどのマスコミ・新聞は『内部被ばくは無かった』といった見出しであり、マスコミや多くの国民をミスリードした事は大きな社会的問題。

7) バンダジェフスキー博士の論文によれば、今回のWBCの検査が如何に粗悪で杜撰なものか。内部被ばくが小さかったとして安全であるかの如き結論を導くものは間違いである事は明白。

8) 抄訳表1の福島県のHPに掲載されたホールボディーカウンター検査結果で『10000人以上の受診者の99.9%がセシウム134、137両方の預託実効線量を足しても1mSvに届かない』との結論や、本論文中のP5,P6にもベクレルからSvへ換算した実効線量値が述べられているが ICRPのベクレルからSvへの換算係数を使用しての事であり、この係数か必ずしも内部被ばく値を正しく反映している臨床データはない。
ECRRの換算係数はICRPの換算係数の数倍~数十倍もの係数であり、 ICRPの矮小化を批判している。
ICRP の換算係数が正しいとするならば、その臨床データを示して欲しい。( ICRP は内部被ばくの検討を中止した経緯あり)
 この論文は内部被ばくを矮小化するICRPの主張を正しいものとして世界に発信するもので、被災者の立場からは容認できるものではない。

9) 抄訳P2の福島市の土壌汚染~100kBq/m2とあるが爆発当初は福島県庁前の土壌は1000kBq/m2以上もあり訂正が必要では??土壌汚染度は日が経過する毎に下がっていく為、土壌汚染度を論文に提示する場合は、いつの時期かを明示すべき。

10) 抄訳P2でUNSCEARが土壌汚染度と内部被ばくの預託実効線量値の関係係数を20としているが、この係数を採用する土壌汚染の時期は爆発後いつの時点なのかがあいまいである。
又8) の理由からベクレルからSv(内部被ばく預託実効線量値)への換算係数の正当性があいまいであり、この根拠や詳細説明を明示願いたい。

               
ーーー

竹野内真理 (翻訳家、ジャーナリスト)

1.やはり一番私が聞きたいのは、BqからmSvへの換算式の根拠です。論文157ページの最後から8行目、2mSvが400Bq/day、60000Bq/Bodyとなっていますが(すなわち1mSvでは200Bq/day、また30000Bq/body、(こんなきれいな数字になること自体が、不思議です。根拠を示してほしい)、この根拠はどこから来ているのか。計算式とその計算式を作った科学者もしくは機関、その根拠を示してください。

2.坪倉医師は、沖縄の講演会で『バンダジェフスキー論文読みました。正直困っています。』と述べ、自身のブログでも10~20Bq/kgで、心臓への異変が生じる可能性について引用しています。

上記の6万ベクレル/Bodyは、60kgの大人で1000Bq/kg、30kgの子供で2000Bq/kg、また法定の1mSvでも30000Bq/body、すなわち、10kgの赤ん坊では、3000Bq/kgという殺人的な数値となります。この点についてどう考えますか?

3. WBC検査で、初期被ばくを完全に見逃しているが、このことをどう考えますか?
ちなみに東大医科学研究所の上昌広教授も以前にTWで以下の発言をしています。
「初期に高い被ばくをした住民がいるのは確実です。(中略)放射線大量放出があった3月15日は飯舘村などでは、子どもを外で遊ばせていました。土壌の汚染濃度も高い。甲状腺がんは将来出ると思います」

(質問の根拠)甲状腺がんの発生について:東京都での3月15日の被ばく量で6.3μSv/h=1100Bq/m3=吸い込んだ量は1100Bq/m3×22m3(大人が一日に吸い込む空気の量)÷24時間で約1008Bq/hという数値が出ている。福島市のSv最高値が約24マイクロであったので福島市の人でも1時間で4000Bq近く吸入している計算になる。また、NHKの低線量被曝の番組で、浪江町1万Bq/m3が出ている。


すなわち、浪江の町民は、一時間当たり、10000Bq/m3×22m3(大人が一日に吸い込む空気の量)÷24時間=9167Bq/hも吸入被ばくをしていることになる。このような大量被ばくで、甲状腺がんへの影響がない方が、おかしいと考える。
それから放出放射能中の核種の割合であるが、3月15日に関しては、東京都産業労働局において、14核種のBq数が出ている。(ただしこの14核種で全てであるというわけではない。)


ヨウ素は、測定された核種の4分の1のBq数を占め、ここから浪江町の住民のヨウ素被ばく線量も推定できるはずである。
ただし、バンダジェフスキー論文によれば、セシウムに関しても、甲状腺に溜まりやすく、また甲状腺がんの発生を相乗的に高める。また他の核種については、研究が存在しないが、甲状腺がん発生の相乗効果に寄与する可能性があり、ヨウ素131のみのBq数で、発生率を計算してしまうのは早計と思われる。


     ーーー次回につづくーーー


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