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国連科学委員会2020レポートの欺瞞と歪み

【国連科学委員会(UNSCEAR)2020レポートの欺瞞と歪み】

昨年12月に発行されたUNSCEARレポートには多くの欺瞞と歪がある。この問題点については、科学誌の『科学』に東京新聞記者である、榊原崇仁記者が論考を掲載している。その内容も参考にしながらまとめてみた。今後はUNSCEARに公開質問を提出していく。

1.初期の経口摂取線量の過少評価
~UNSCEARが無視できるとした根拠は破たん~
「UNSCEARがモニタリングデータによる詳細な評価を組み合わせて、より現実的で頑健な推計を行った」としているが具体的記述はない。

①浪江町民が津島に避難した3月12日以降、避難先で路地野菜の炊き出しを食べた。(3月15日、38km北西部の雑草は123万Bq/kg)

②3月16~17日の川俣町の原乳(ヨウ素131は1190~1510Bq/kg、3月20日でも最大で3300Bq/kg)が福島県内に出荷されていた可能性がある。

③未公開福島県中央卸市場データ(3月19日)

  福島市のアサツキ    ・ヨウ素131    48,000Bq/kg   ・ヨウ素132   76,000 Bq/kg

   ※出荷制限なし    ・セシウム134 64,000 Bq/kg    ・セシウム137 64,000 Bq/kg

  大玉村のホウレンソウ  ・ヨウ素131    43,000 Bq/kg  ・ヨウ素132    73,000 Bq/kg

   ※3月22日まで流通 ・セシウム134 90,000Bq/kg     ・セシウム137 89,000 Bq/kg

      上記はOurPlanetTVより転記 (詳細は以下)
      http://www.ourplanet-tv.org/?q=node/2597

④事故後10日間廃棄処分の牛乳を3世帯で飲んでいた。

⑤京都大・今中氏の飯館村個別訪問インタビュー結果。
 (3月15,16日何をしていたか、何を食べたか、いつ避難したか?)
  ・給水を待つ間に屋外で飲食した。
  ・当時淡水魚を食べていた。
  ・イノシシを食べた。

2.吸入摂取量の矮小化
1)避難地域の対象者の40サンプルの選定方法に歪み?
①40人のサンプルが10万人以上の避難者の全てを表しているとは言えない。
 対象数が40人と少なく、意図的、恣意的にデータを捻じ曲げていないか?
 (都合の良い対象者を選ぶことによって恣意的なデータが捏造できる。)

②甲状腺がんの関係を追及するなら線量値の高い地域住民を主に対象とすべき?少なくとも対象者の数は当時の住民の人口に比例させるべき?

③比較的線量の低い南相馬市や相馬市、楢葉町、川内村住民を多数対象としているが恣意的なデータ改ざんに当たらないか?

④線量の高い、避難地区となっている浪江町(特に津島地区)、双葉町、大熊町、飯舘村、川俣町山木屋地区の住民を対象とすべきではないか?

2)初期被曝(ヨウ素)は外部被ばく(Cs)から推定しているが、地域によっては外部被ばく線量とは必ずしも比例していない地域(30倍の開き)がある(森口教授らの論文)が、その事を考慮していない。

3)1号機のベントや水素爆発後の住民の被曝が無視。
    ・1号機のベント:3月12日 14:30頃
   ・1号機水素爆発:3月12日 15:16

①爆発当時300人が北西3kmの双葉町役場に残っていた。
②双葉町民の一部は12日12:00~18:00に避難開始。
③双葉町民の一部には13日以降に避難した住民もいた。
上記の住民の被曝線量はどのように考慮したのか?

4)40パターン(大葉氏らの論文)だけの被ばく線量値を平均化した事は被ばくの実態全容を表しているとは言えない。

5)避難者への甲状腺内部被ばくモニタリングでは13,000cpm(100mSv相当)に関し、政府事故調のヒアリングで当時現場に立ち会った放医研の立崎氏は以下のように証言している。
『かなりの割合で13,000cpmを超えていた。』と説明。この事をUNSCEARは無視している。

※あまりにも多くの住民が13,000cpmを超えたので、3月14日以降、放医研(福島県)は『10万cpmに達しても0.17mSvに過ぎない』(注)とし、17日にはその事を文書に出し、「避難者はどんな値でも問題ない」とされてしまった。実態は把握されずに、闇に葬られたまま。

注:放医研の細井 義夫.福島県のスクリーニングレベル引上げについての証言も重要。立崎氏の証言と一致。

   https://www8.cao.go.jp/genshiryoku_bousai/fu_koukai/fu_koukai_2.html


6)3月24日~30日に政府によって実施された1080人のモニタリングで、甲状腺等価線量で100mSv※を下回った為に、全体的に問題ないとして、その後のモニタリングを中止。
  ※100mSv以下とした基準が不明(10万cpm以下か?)

 ★この一連の重要な役割?を果たしたのが放医研の明石氏ら
 ・「10万cpmでも0.17mSv」の文書作成に関与
 ・「半減期の問題で測る時間が残されていない」と政府に進言
 ・放医研は被害の過少化や測定中止へ働く
 ・UNSCEAR2020レポートに放医研の明石氏が深く関与 
  (上級技術顧問、日本人作業部会で文献調査を指揮)
   ⇒自らの不作為を消し去る為のマッチポンプ?

3.線量推計値の矮小化(係数を1/2)
1)放射性ヨウ素の体内摂取量から甲状腺に集まる係数をICRP係数の1/2を採用し、被ばく線量値を矮小化
  ※日本人は西洋人に比較し昆布の摂取量が多い為に甲状腺に集まる放射性ヨウ素が西洋人(注)の半分(15%)としたようだ。
    注:西洋人は30%としている。

①最近の研究(2015年学術誌論文)によると「特に若い人に食事パターンの変化に伴い、ヨウ素不足が徐々に増加しうる」とある。

②日本人が放射性ヨウ素を摂取した場合に甲状腺への取り込みは16.1±5.4%や,12.8±5.7%とした。この時の被験者は15人及び6人のみで、日本人全体の平均とは言えない。

③福島県によるとがん患者の尿中の安定ヨウ素は1Lあたり「100μg」台と少なかった。(日本人は300μgと言われてきた。)

4.外部被ばく線量値の矮小化
①各自治体の外部被ばく線量値の平均値では個人の被曝線量の実態を示せない。各自治体毎の最大被ばく線量値と最少被ばく線量値を示すべき。

②バックグラウンド値を過剰に引き過ぎている。(バックグランド値は子ども行動パターンにあわせ、オンファントムで測定すべき)
  ⇒0.54 ~0.63 mSv ⇒0.24mSv程度とすべき※

※詳細は以下
https://nimosaku.blog.ss-blog.jp/2021-04-22
https://userdisk.webry.biglobe.ne.jp/003/302/01/N000/000/000/161906861162644080329.pdf

5.甲状腺がんの多発は放射線の影響
①UNSCEAR2013年報告による甲状腺がんのリスクの記述
UNSCEAR noted a theoretical possibility that the risk of thyroid cancer among the group of children most exposed to radiation could increase and concluded that the situation needed to be followed closely and further assessed in the future. However, thyroid cancer is a rare disease among young children, and their normal risk is very low.

②A129では、0.2%(約200人強?)程度は100mGyの被曝をしたと推定。

③パラグラフ220,221で事故時5歳までのグループでは放射能に起因した甲状腺がんが約16~50例になると推定。

④福島県の評価部会ではUNSCAER2020レポートの線量評価には問題が多いとして、UNSCEARレポート採用を否定。

⑤日本国内の4つの論文では甲状腺がんの発症には地域差があるとしている。(UNSCEAR2020レポートは本論文を無視し、明石の関与により鈴木元氏の論文を主ににより採用)

7.日本作業グループの役割・ミッション
•5. The reviews of the literature reported in the three published white papers and carried out subsequently have been conducted by a group of scientific experts (the Expert Group), supported by a group of scientific experts from Japan (the Japanese Working Group), and under the direction of two senior technical advisers, and a project manager.
•The detailed analyses were conducted by expert task groups set up for the purpose under the leadership of relevant members of the Expert Group and with involvement of relevant members of the Japanese Working Group.

•Some of the experts were assisted in their work by supplementary staff in their national institutes. An expert supported by Japan assisted the secretariat in Vienna. All involved were required to declare any potential conflicts of interest, which were reviewed by the secretariat to confirm that there were no conflicts of interest for the work in which the experts were involved. The work was carried out in accordance with a quality plan for the project.

•6. The secretariat provided support to the technical work, interalia, by arranging a visit by the Expert Group to Japan to discuss research work being carried out in Japan on the levels and effects of radiation exposure due to the FDNPS accident with Japanese researchers, by convening meetings in Vienna of the task groups carrying out the detailed analyses to facilitate the planning and implementation of this work, by providing a platform for online meetings and an online workspace for sharing and managing data and information, and by liaising with governments and other international organizations. The Governments of Australia, France, Germany, Japan, Norway and the United Kingdom made in kind contributions through expertise in this project.

放医研の明石らで構成された『日本作業グループ』は詳細分析に関与。そして科学秘書としても貢献したとある。このレポートはまさに明石らによって、当時の不作為を隠ぺいし、被ばくが無かった事にする為に、都合の悪い論文は無視し、被ばくを矮小化した鈴木元らの論文だけを取り上げる等の工作(捻じ曲げ)がされた事は明らか。この事は福島県の評価部会(座長:鈴木元)メンバーからも問題視されている。
8.UNSCEARの中立性への疑問
①UNSCEARの内情をよく知る元WHO放射線・公衆衛生顧問キース・ベーヴァーストックが2014年11月に来日し、日本外国人特派員協会で行った記者会見スピーチ。

『委員のほとんどは、経済的重要性の高い原子力推進プログラムを持つ各国政府の指名制であり、これらの政府はまた、UNSCEARに資金も提供している。原子力産業ロビーに批判的な声をあげてきた研究者で、UNSCEAR報告書の作成に関与している人はいない』

②外務省がUNSCEARの報告書作成に、2013年度約7000万円の資金を提供。2017年度には改訂版作成のため新たに7000万円拠出。被災者たちが日本政府を訴えた裁判で、日本政府の拠出金によって作られた報告書を「中立で」「国際的に権威ある」「科学的知見」として日本政府の弁護に使っていることになる。

『UNSCEARレポートを捻じ曲げた黒幕は誰か』は以下ご覧ください。
https://nimosaku.blog.ss-blog.jp/2021-04-07

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