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日本の危機管理への備え~感染症と災害~

日本には危機管理を横断的に備える組織機がない。感染症に関しては厚労省だろうが、ここの技系医官は省益と利権を最優先し、国民の命を軽視している。いわゆる感染症ムラの一員となっている。

喉元通れば熱さをを忘れる。災害は忘れた事にやってくる。災害に備えて国民の生命と財産を守り抜くといった危機意識が霞が関にも永田町にもない。彼らの最優先事項は、自分たちの省益や利権を死守する事、そして選挙に勝つ事である。この基本に立って彼らは行動する。

以下医療ガバナンス学会のメルマガを転載する。

【日本の危機管理への備え~感染症と災害~】

某保健所長

2022年1月12日 MRIC by 医療ガバナンス学会 発行  http://medg.jp
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今新型コロナウイルス感染症が猛威を奮っているが、このような新興・再興感染症の脅威はずっと前から幾度も指摘されてきた。代表的なものでも、2002年SARS、2009年新型インフルエンザ、2012年MERS、エボラ出血熱のアウトブレイク、毎年起こる鳥インフルエンザ、、、そう、何度も重大かつ身近な警告は発せられていた。

しかし、日本の対策は、そのような危機に対して真剣に向き合って来ただろうか?準備はどのような形で進んできたのだろうか?保健所機能の強化とか日本版CDCの創設とか、、、掛け声だけは聞いたが、すぐに立ち消えになり、本質的な体制確立には程遠かった。

起こらないことを前提にした見せかけだけの対策に終始してこなかったか。ただやりやすいことをパフォーマンス的に行う形だけの訓練ではなかったのか。例えば、永遠の脅威である新型インフルエンザへの対策は、プレパンデミックワクチンとか抗インフルエンザ薬の備蓄とか、、、訓練といえば、ビニールで養生した保健所の事務車で、PPEを着た保健所職員が感染者を感染症指定医療機関に運ぶ訓練、、、これが知恵を振り絞った対策なのだろうか。

私は都道府県(以下県と略)の保健所長会で本庁からの新型インフルエンザ対策の説明の場で発言したことを今も克明に覚えている。感染症は、その病原体の性質、時間、場所、地域の医療体制により、対策は刻々と変わっていく、そのようなことに対応する訓練、本部訓練の必要性である。

しかし、出た意見は、抗インフルエンザ薬の備蓄場所とか、患者搬送のやり方などの形だけのもの、むしろ、私がとんでもないことを言っているという扱いだった(注1)。状況を科学的に解析し、それに応じた対策を行うリスクマネジメントの必要性を提唱したが、全く理解が得られなかった。新しい病原体の性質の情報を正確に得ることは容易ではなく、むしろ完全にわかるのを待っての対応は手遅れで(注2)、積極的に取りに行き得られた情報を元に解析して、想定外に対応できるようPDCAサイクルを回していく本部機能の重要性、、、

日本は災害が頻発する国だ。毎年のようにどこかで災害が起こっている。どれ一つとして、同じ災害はなく、想定外の連続と言っても過言ではない。情報を積極的に取りに行き、その情報をもとに本部がどのように対応していくか、その重要性はいやと言うほど明らかになっているではないか。想定外に対応できるようPDCAサイクルを回していく本部機能の必然性!もう、防災服を着ての軍隊まがいの儀式やヘリコプターショーを繰り返すだけの防災訓練が役に立たないことは皆知っているではないか。

病院も元気な看護学生を被災者に見立ててトリアージ訓練に終始する、これも同様だ。情報の重要性、それに基づいた対策、そして、それを修正していく、、、今まで起こった災害を全て網羅するような地域防災計画を後付けで作ることの無謀さ。それは到底無理だし、全国の防災計画を積分したような分厚いマニュアルが緊急時に役に立つはずがない。その役立たずの分厚いマニュアルにない想定外は必ず起こってくるのだ。

災害対策で学んだはずの教訓は感染症対策には生かされていない、実際には、感染症のパンデミックは災害に分類されるのだが。思いつきでマスクを配ったり、休校にしたり、オリンピックを強行したり、極めつけは、この国家の一大事において質問にはまともに答えず、リーダーシップが見えなかった国のトップ、国会を開いて対策を検討しようともしなかった国会議員、、、早くも危機管理庁設立の掛け声は聞かれなくなった。保健所機能の強化も案の定専門職ではなく事務職員の応援でお茶を濁そうとしている(注3)。

見方を変えれば、コロナになって、国や県の危機管理能力の問題があらためて明らかになった(いつものようにかな?)。最前線である保健所と医療機関の生の情報を吸い上げる仕組みがない、海外で既に起こっている情報を科学的に分析し公開しそれを活かすシステムがない、平常時と同じくトップダウンでお役所仕事的に対応しようとする、国のせいにするだけで県の有効な対策が打ち出せず「お願い」「自粛」「正念場」とかを繰り返す、、、(注4)

「すべては被災者のために」が災害時の共通の目標だが、感染症対策は誰のために行うのか、原点に立ち返って真剣に考えなければならない。

注1: 自分の搬送訓練はDVDになっていると自慢する意見まで出た。
注2:フォン・クラウゼヴィッツの言う「戦場の霧」。
注3:今の時点になっても、保健所機能の強化の具体的な全体像が示されない。事務職員の応援は、本質的な保健所機能の強化とは全く違う次元の話だ。現場での裁量権を持つ専門職の重要性がわからない本庁の事務職が短絡的に考える浅はかさ!そもそも、保健所の役割や意義をどう考えているのだろうか?

注4:保健所職員の優先追加予防接種さえ考えていない県、保健所とか公衆衛生がわかっているとは思われない県、医療となると極端に気を使い県医師会に丸投げしようとする県、医療と言っても感染症、呼吸器内科、集中治療、かかりつけ医、病院管理者で考え方や立場も違うのに各々の意見を吸い上げてまとめる発想さえない県、感染力が格段に跳ね上がっているのにまだ従来株の知見から得られた濃厚接触者の定義に固執して積極的疫学調査に向かわせる県、個人情報保護を盾に病院―診療所―保健所―市町村の連携を進めようとしない県、、、
なんとか班とか場当たり的に本庁に人ばっかり増やしているが機能している?県の実質的な司令塔は誰?実質的な本部は?そして、具体的にどうしたいのか?

略語
SARS: Severe Acute Respiratory Syndrome
MERS: Middle East Respiratory Syndrome
CDC: Centers for Disease Control and Prevention
PPE: Personal Protective Equipment
PDCA: Plan-Do-Check-Action

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