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UNSCEARレポートに日本はどう関与したか?(2)

『UNSCEARレポート日本側はどう関与したのか(1)』(以下ご覧ください)の続き・・

4.UNSCEARへの公開質問から見えてきたもの
 避難地域住民の40のシナリオ(代表的な避難経路によって住民の被ばくを推定)には、避難が遅れたり、一時避難先で、炊き出しで出された高濃度に汚染された露地野菜を食べたり、出荷制限前の3月23日まで市場に出回っていた野菜を食べたりした住民が考慮されていない等、多くの疑問・疑念がある。

 そこで2021年9月下旬、UNSCEARに20項目以上の『公開質問』を提出した結果、3週間後に回答が届いたが、一部の質問以外は項目ごとの質問には答えず、2021年12月に発行予定(実際は2022年3~5月に発行)のアタッチメントを読めと、満足な回答は得られなかった。しかも予定よりも3か月以上遅れて、2022年3月~5月に発行されたアタッチメントには、公開質問への答えは含まれていなかった。UNSCEARは都合の悪い質問を無視する非科学的な組織である事が明確となった。公開質問のQ&AをHPに掲載するよう何度となく要求したが、未だに公開されていない。

5.UNSCEARの公平・中立性への疑念
 同時に公開質問したUNSCEARの公平・中立性に関しては、3週間後に回答が届いた。UNSCEARへの質問は以下のようなものであった。

 「中立性についてUNSCEARの見解をお聞かせください。 UNSCEARの内情をよく知る元WHO放射線・公衆衛生顧問キース・ベーヴァーストックが2014年11月に来日し、日本外国人特派員協会での記者会見スピーチ要旨が以下。『委員のほとんどは、経済的重要性の高い原子力推進プログラムを持つ各国政府の指名制で、これらの政府はまたUNSCEARに資金も提供している。原子力産業ロビーに批判的な声をあげてきた研究者でUNSCEAR報告書の作成に関与している人はいない』」

 上記の質問に対するUNSCEARからの回答の一部は『12の加盟国とオブザーバーからの30人以上の国際的な専門家が取り組み、13人の批評的査読者が報告書をレビューした。さらに、200人以上の参加者が参加した第67回委員会が報告書を検討し採択した。』と言うものであった。その回答はUNSCEARの中立性を一般論として説明しているものの、個々の問題点や疑問点に関する決定プロセスについての具体的説明には触れていない。

 日本作業グループが提供した都合のよい論文やデータをもとに、執筆者(専門家)が公正・中立に議論しても、もともと偏った論文やデータでの議論では結論が偏る事は明らかで、UNSCEARの公正・中立性の説得性には欠ける。執筆する専門家も日本作業グループや国内対応委員会の偏向した情報を容易に受け入れている。

6.パブリック・ミーティングで明らかになった問題点やメディアの反応
  放射線の専門家を対象として東工大で開催されたパブリック・ミーティングにWeb参加し、質問を投げかけた。出荷制限がかかる3月26日までは、住民が自家栽培や流通していた、放射能で汚染された野菜や牛乳を摂取しているが、その内部被ばくを無視しているのではないかとの質問に対し、UNSCEARの回答は「インパクトは低い」と何の科学的根拠も示さず一方的な回答であった。

  いわき市でも多くの間違いや疑念を科学者や市民から多数出された。これをきっかけにNHK、東京新聞、福島民報、そして地元月刊誌・政経東北はUNSCEAR批判報道や記事を出しはじめた。 
  
産経新聞 は『風評は科学を凌駕する』といった記事を7回連載で掲載。第1回目の記事はいわき市でのパブリック・ミーティングを取り上げた。その記事の中で参加した市民や学者からの意見を取り上げ、『UNSCEARが20年報告書作成にあたり日本から7000万円の資金が提供され為「被爆影響を小さく見せようとする意図がある」という声もくすぶる』、

『UNSCEARがいう独立は被害者から独立し、政府側に立つことか』、『UNSCEARの報告書は一般市民には議論する機会が与えられなかった』、『20年報告の結論撤回を求める緊急声明やハースらを追及する質問の事例集も並び』、『沈着速度が3桁少なく表記されている』、『UNSCEARは20年報告で被爆量の推定値を過小評価していることになる』、『会場からは反発の声が上がった』といった記事も、鈴木元氏のコメントと共に列記し始めた。

  一方東京新聞 も『誤ったグラフやデータが複数ある。物理的にあり得ない数値を出し、論文引用の誤りで被爆線量の過小評価をしている。科学的な報告書とは程遠い』との科学者の批判を掲載。

  NHK は『国内の研究者らで作るグループが報告書の検証結果を発表し、甲状腺被ばくの原因となる放射性物質のヨウ素131が、原発事故の発生直後、大気中にどれだけ存在したか試算した部分で、元となった論文のデータを誤って引用し、被ばく量を少なく評価しているなどと指摘しました。』『グループ側は結論の撤回を求めています。』と報道した。NHKの批判報道は今までのUNSCEAR報告書は正しいものとしている県民や市民にとっては、大きな影響力を伴う画期的な報道であった。

7.鈴木元氏の関与
  甲状腺への取り込み率を1/2にしたのは鈴木元氏の提言であった事を3項で述べた。更に屋内退避効果を1/2にした件について、あるNPOが開催したセミナーでJAEAの講演者N氏へ質問をぶつけてみた。後日以下のような回答がメールで届いた。この回答からも鈴木元氏が被ばく線量を低減する事に、決定的で大きな影響を与えていた事が判明した。

 「屋内退避による吸入の低減効果0.5は、H君(JAEA)の実験データに基づきUNSCAERが決定したものであり、H君の論文で決定したものではありません。正確には、H君の実験データに基づき、鈴木元先生がばらつき(0.1から1)の中央値として用いたものを、UNSCEARが採用したのです。」

8.UNSCEARが非科学的である4つの理由
 UNSCEARが如何に非科学的で、開かれていない組織であるかについて、別の視点から纏めてみた。これ以外にも多くの非科学的で、政治的な疑念や問題がある事は既に述べた。
 1)UNSCEAR報告書をチェックする機能の存在はない。
 2)UNSCEAR報告書では中身と結論が一致していない。
 3)国内対応委員会とUNSCEAR間との文書開示を拒否。
 4)他の研究者が検証不可能な福島医大論文を多数採用。






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