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UNSCEAR2020/21報告書に日本側はどう関与したか?(簡易版)


簡易版として纏めてみた。

国連科学委員会(UNSCEAR)は2021年3月に『UNSCEAR2020/21報告書』を発表した。「将来にわたり被ばくを直接原因とするがんなどの健康被害が増加する事は低い」とのプレスを発表し、メディアや国民を意図的にミスリードした。本文とは大きな齟齬があるものであった。

1.日本政府はどう関与したか?

首相官邸のHPには『18人の委員と100人近いコメンテーターで「アンスケアー国内対応委員会」を組織して報告書案を精査し、アンスケアー事務局に対し、コメントや必要な追加情報を提供して支援しています。』とある。原発事故4か月後に政府が立ち上げた。

一方で、外務省は『放射線の影響に関する過度の不安を払拭すべく、国内外への客観的な情報発信を促進する』報告書作成目的でUNSCEARに2013年度約7100万円、2017年度には改訂版作成のため新たに7000万円拠出している。

被災者たちが日本政府や東電を訴えた裁判で、日本政府の拠出金(国民の税金)によって作成された報告書を「中立で」「国際的に権威ある」「科学的知見」として日本政府の弁護に使っていることになる。


2.国内対応委員会と明石眞言氏(旧放医研)はどう関与したか?

国内対応委員会は旧放医研(明石眞言氏ら事務局3名含め計8名)、放影研(2名)、電中研、JAEA、長瀬ランダウエア、東京医療保健大、国際医療福祉大(鈴木元氏)、広島大、京大、近畿大、久留米大から計19名で構成されている。オブザーバとして文科省、原子力規制庁、環境省(4名)、外務省から参加している。メンバー選定には明石氏が大きく関与した。

2020年11月2日~6のUNSCEAR第67回会合に先立ち開催された日本国内対応委員会案が、UNSCEAR第67回会合でほぼ通った。従い、UNSCEAR2020レポート内容は鈴木氏や明石氏らが事務局にまとめさせた日本案がほぼ通ったと見て良い。この委員構成からも明石氏が鈴木氏と組んで、UNSCEARレポートを恣意的に矮小化している構図がうかがえる。

3.日本作業グループと鈴木元氏(国際医療福祉大・甲状腺評価部会長)はどう関与したか?

一方UNSCEAR内に設置された日本作業グループのメンバーは5人で、旧放医研の明石氏、赤羽氏、青野氏とJAEAの茅野氏、放影研の小笹氏である。日本人作業グループはレポートを直接執筆はしないが、詳細分析や情報提供に強く関与し、特に日本からの論文や文献を執筆者に提供し、報告書の草案に対する技術的コメントをする事がミッションである。

明石氏は国内対応委員も兼ねており、明石氏が被ばく線量を小さく見せるような論文や、鈴木元氏の被ばく線量矮小化論文を優先して取り上げ、執筆者に提供する事は容易であった。 

その事はいわき市でのパブリック・ミーティングで執筆者のハース氏が、日本人の甲状腺への取り込み率を1/2にしたのは鈴木氏の提言を採用したものだったと暴露した。更に屋内退避効果を1/2にし、内部被ばく線量値を過小化したのはやはり鈴木氏の助言である事が、ある講演会の質疑応答で判明した。鈴木氏の内部被ばく矮小化への強い関与が実証された。


4.公開質問から見えてきた『公正・中立性』への疑念

避難地域住民の40のシナリオ(被ばく線量を算定)には多くの疑問・疑念がある。そこで2021年9月下旬、20項目以上の『公開質問』を提出した。その回答は一部の質問以外は項目毎には答えず、2021年12月に発行予定(実際は2022年3~5月に発行)のアタッチメントを読めというものであった。しかし、アタッチメントには公開質問への答えは含まれていなかった。 

UNSCEARは都合の悪い質問を無視する非科学的な組織である事が明確となった。

同時に公開質問した『公正・中立性』に関しては、3週間後に回答が届いた。その回答はUNSCEARの専門性の組織体制を説明しているものの、個々の問題点や疑念に関する報告書の策定や決定プロセスについての具体的説明には触れていない。

日本作業グループが提供した都合のよい論文や文献をもとに、執筆者が公正・中立に議論し執筆した報告書は、もともと偏った論文やデータでは結論が偏る事は明らかで、UNSCEARの公正・中立性の説得性には欠ける。世界中の専門家や市民が検証できるように、公開質問のQ&AをHPに掲載するよう何度も要求しているが、未だに公開されていない。

5.パブリック・ミーティングで明らかになった疑念やメディアの反応

東工大で開催されたパブリック・ミーティングで、出荷制限がかかる3月26日までは、住民は自家栽培や流通していた放射能で汚染された野菜や牛乳を摂取しているが、その内部被ばくを無視しているのではないかとの質問に対し、UNSCEARの回答は「インパクトは低い」と、何の科学的根拠も示さず一方的な回答であった。

いわき市で開催されたパブリック・ミーティングでも、多くの間違いや疑念を科学者や市民から多数出されたが、納得いく回答は得られなかった。これをきっかけにNHK、東京新聞、福島民報、そして地元月刊誌・政経東北のUNSCEAR批判報道や記事が出はじめた。 

NHKは『国内の研究者らで作るグループが、甲状腺被ばくの原因となる放射性物質のヨウ素131が、原発事故の発生直後、大気中にどれだけ存在したか試算した部分で、元となった論文のデータを誤って引用し、被ばく量を少なく評価しているなどと指摘しました。』『グループ側は結論の撤回を求めています。』と報道した。

一方東京新聞も『誤ったグラフやデータが複数ある。論文引用の誤りで被ばく線量の過小評価をしている。科学的な報告書とは程遠い』との研究者グループの批判を記事にした。

産経新聞は『風評は科学を凌駕する』との7回連載記事で、いわき市でのパブリック・ミーティングを取り上、『UNSCEARが20年報告書作成にあたり日本から7000万円の資金が提供され為「被ばく影響を小さく見せようとする意図がある」という声もくすぶる』、

『UNSCEARがいう独立は被害者から独立し、政府側に立つことか』、『20年報告の結論撤回を求める緊急声明やハースらを追及する質問の事例集も並び』、『沈着速度が3桁少なく表記されている』、『UNSCEARは20年報告で被ばく量の推定値を過小評価していることになる』『会場からは反発の声が上がった』との記事を、鈴木元氏の反論と共に併記した。

朝日新聞も『被ばく影響割れる見解』と、両論併記の記事を10月6日に報じた。『線量の大幅な過小評価』で『非科学的な分析と批判』と、国内研究者たちの批判記事を報じた。


NHKや東京新聞、地元紙等の批判報道や記事は、正しいものと信じられていたUNSCEAR報告書を再検証すべきとの世論形成に大きな影響力を与えた画期的な報道であった。


詳細文(全文)は以下をご覧ください
前半:https://nimosaku.blog.ss-blog.jp/2022-09-20
後半: https://nimosaku.blog.ss-blog.jp/2022-09-22

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 


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