SSブログ

被曝原因を否定する福島医大を批判する

疫学学科誌に掲載された福島医大の論文『福島特集号』の論考は科学を装っているものの、放射線の影響でないとする科学的根拠をどこにも示さず、もっぱらUNSCEAR2020/21報告に依拠し、線量が低いので放射線影響とは考えられないという憶測に過ぎない。

事故から12年過ぎても、甲状腺がんと被ばくの関連性を否定しているのは、内部被ばくをUNSCEARの報告書に依拠し、二桁以上も矮小化し続けている結果に過ぎない。

福島医大には県民の(内部)被ばく線量値を自ら検証する能力は無い。このような大学が県民の健康調査をしている事が県民にとっては不幸と言わざるを得ない。


以下、某ミニコミ紙に掲載された福島医大批判の記事を転載。
(本人のご了解済み)

【甲状腺がん、被曝原因を否定する福島県立医大を批判する】
                                                   藤岡毅
(3.3福島大シンポジウムコーディネータ/大阪経済法科大学客員教授)


福島県立医大は、所属する研究者たちの執筆論文を掲載した「福島特集号-東日本大震災後の10年」(日本疫学会誌Journal of Epidemiology, 2022年12月)を公開した。

同特集は、福島県民健康調査甲状腺検査での小児甲状腺がんの数十倍多発の原因は放射線被ばくではなく、高感度超音波スクリーニングによる過剰診断だと結論づけた。同医大放射線医学県民健康管理センター(神谷研二センター長)は、福島県の委託により県民健康調査を実施してきた。同調査検討委員会が小児甲状腺がん多発は「放射線の影響とは考えにくい」としてきた論拠の多くは、「福島特集号」の著者たちが提供してきたものである。


2023年3月4日、同センターは国際シンポジウムを開催し、「福島特集号」を「今年度の最大のトピックの1つ」と讃えて宣伝した。

しかし、特集号の論考は科学を装っているものの、放射線の影響でないとする科学的根拠をどこにも示さず、もっぱらUNSCEAR2020/21報告に依拠し、線量が低いので放射線影響とは考えられないという憶測に過ぎない。
福島医大シンポジウム前日の3月3日、甲状腺がん多発は原発事故による甲状腺被ばくが原因と考える科学者・医師、研究者、甲状腺がん患者支援者等が共同してシンポジウムが開催された。


「福島特集号」とUNSCEAR2020/21報告書の検証・批判が行われた第1部では、医学における因果関係を証明する学問である「疫学」の専門家・津田敏秀岡山大大学院教授(環境疫学)が登壇し、過剰診断が生じた科学的根拠は存在せず、数十倍の甲状腺がん多発は被ばく起因でしかあり得ないことを示し、国際環境疫学会(ISEE)が日本政府や福島県庁に発した注意喚起の書簡(Early Release警告)が7年半も無視され続けている事実を異常なことだと訴えた。

加藤聡子元短大教授(物理化学)は、福島県立医大の線量効果関係なしの論文(大平他,2016,2018,2020等)が被ばく起因否定の根拠にされてきたが、線量率の高い地域と低い地域を一つの区域にするなど恣意的で不合理な地域区分を修正して分析すれば、線量効果関係が示されること、甲状腺がん年間発生率とUNSCEAR2020/21甲状腺線推定量との間にも明確な直線関係が存在することを示した。

さらに、直線の傾きをチェルノブイリ事故の場合と比較することによって福島事故の甲状腺被ばく線量が70分に1に過小評価されていることも示された。黒川眞一KEK名誉教授(加速器物理学)は、UNSCEARが線量推定で全面的に依拠した大気中濃度の輸送と拡散、沈着モデル(ATDM)に関する寺田らの論文が3月15日〜16日に福島市を襲った最大のプルームを捉え損なっていたことを明らかにし、二桁以上の線量推定の過小評価につながることを指摘した。

さらに、本行忠志大阪大学名誉教授(放射線生物学)は日本人のヨウ素摂取効果や屋内退避効果など事実に反する多くの仮定によってUNSCEAR甲状腺線量推計が1桁以上過小評価されている事実を指摘した。黒川報告、本行報告は加藤報告を定量的に裏付けるものである。甲状腺検査で30mm以上の腫瘍が最低でも11例見つかっていることから事故後の多発は臨床的にも明らかである(種市靖行医師のコメント)。

第2部では、甲状腺検査の縮小を求める声がある中で、崎山比早子医師(3.11甲状腺がん子ども基金代表理事)は、甲状腺がんに罹患した若者のアンケート調査結果を公表し、また、「過剰診断論」がいかに実体をとらえておらず、検査が早期発見・早期治療に有効であることを具体的に示した。甲状腺がん支援グループあじさいの会共同代表の千葉親子氏は、「原発事故が起き、放射線物質による汚染があったのに被ばくの心配をすることが非難される社会」の理不尽を説いた。

原発事故以来350名を超える甲状腺がんに苦しむ若者は今後さらに増大すると予想される。被ばくによるの健康被害の深刻さを訴える反被ばく・脱被ばくの要求は反原発・脱原発の立場を必要としないが、反原発・脱原発は反被ばく・脱被ばくであるべきだと思う。
 
★なお、3.3シンポの記録動画、資料などは以下参照。

nice!(2)  コメント(0) 
共通テーマ:地域

nice! 2

コメント 0