原子力災害伝承館は真実を伝えよ
東日本大震災・原子力災害伝承館を訪問した。2度目の訪問である。今回は『福島と放射能』と題した企画展が開催されていた。しかし、展示されていたパネルの解説には驚いた。『間違っていないが正しくない』展示が多い事に愕然とし、怒りが・・
企画展のチラシに書いてある事(下記)とは真逆の展示。チェルノブイリと福島の甲状腺がん患者や放射能の沈着量を比較しているが、いずれも福島での放射能の沈着量や甲状腺がん患者の数を小さく、矮小化させるような展示の仕方であった。(問題点は各パネルの写下記に記載)
環境省のHPからの転載ではあったが、環境省が福島事故の放射能被害を小さくみせようとしている思惑を何の検証もせずにパネル展示している。
企画展のチラシには以下のように書いてある。
『原発事故により、福島は世界に類をみない大規模な複合災害を経験した。復興が前進している部分もある一方、解決しなければならない課題が多数ある。今回の企画展では放射能の基礎から解説する事で『世界に類をみない」とはどういうレベルだったのか、福島の今はどうなっているか、そして原子力災害がもたらしたものとは何だったのかを改めて考えます』
『解決しなければ課題が多数ある』と書いてあるが、展示にはそのような課題の記載はない。原発事故は人災で、反省すべき事が数多くある。誰が反省すべきなのか?問題点や課題を住民に押し付けていないのか?
原発事故を起こした東電や国、その後の対応のまずさを反省しなければならないのに、そこを隠したままの伝承館で良いのか??この運営費は国(県)が出しているとすれば、その目的に叶うようなパンネル展示になり、政府や東電に悪用されていないのか気になる・・
最も反省すべきは経産省や東電はじめとする原子力ムラなのに、反省するどころか、原発再稼働させ、流す必要もない汚染水まで海洋放出している。
ヨウ素配布の失敗もSPEEDIの失敗も、たった1080名で済ませた甲状腺簡易直接測定の問題点も誰も責任取っていない・・初期内部被ばくを隠したまま・・問題の本質を隠したままの伝承は国がいう風評被害や風評加害として責任を住民や被害者に転嫁する構図と同じになっていないか危惧する。
企画展に展示されていたパネルの問題点についてまとめてみた。
【パネル1】
【パネル2】
説明文に『放射能によって起こる甲状腺がんは被ばく時年齢が低い群に、より多発することが知られているため、福島の事例は原発事故の放射線の影響によるものではないとされています。』は、これだけで放射能の影響ではないと言えきれるのだろうか?
子どもの放射線への感受性が高い事は知られているが、多発である事は県民健康調査検討委員会でも認めているにもかかわらず、その多発の原因を言わず(過剰診断は既に学会でも否定されています)に『年齢が低い群に、より多発することが知られている』として放射能による原因ではないと断定している。
この事こそ矛盾だらけ、非科学的と言わざるを得ない・・・『年齢が低い群に、より多発することが知られている』⇒このことが多発である事を無視し『原発の影響によるものではないとされている』という結論を導く、臨床医学、疫学、生物・細胞学の視点での論文なりデータなりを伝承館は提示すべきだ。
【パネル3】
あえてここでこの図を出す意図は日本人は甲状腺への取り込み率が少ない(※)というなら、それは間違いである。
【パネル4】
3.避難住民が対象となっているか不明。鈴木元氏らの40のシナリオのうち、シナリオ
【パネル5】
福島事故の場合、放出した放射能がチェルノブイリの6から7%程度といった、福島の被ばく線量や影響を矮小化しようといった意図がくみ取れる。
福島の場合、チェルノブイリの100分の1程度(この数値は検証要)のエリア(面積)に集中して,放射線が降ったのであり、そこに住む住民の被ばく線量値が問題。絶対量の比較は福島の被ばくを小さいと誤解を与えかねない。もしも100分の1のエリアに16分の1の放射能が降ったと仮定すれば、住民の平均的な被ばく線量はチェルブイリの6倍もの被ばくをした事になる。
絶対量の比較ではなく住民が被ばく線量で比較すべき。このパネルは誤解を与えるもので、即刻表示の仕方を修正すべきか撤去すべきだ。
【パネル6】【パネル7】
①ヨウ素配布の失敗も ②SPEEDIの失敗も ③たった1080名で済ませた甲状腺簡易直接測定の問題点も誰も責任取っていない・・初期内部被ばくを隠したまま・・
以下は参考まで:
UNSCEAR2020/2021報告書の問題点:
(福島医大や県民健康調査検討委員会の結論はUNSCEAR報告書に依拠)http://natureflow.web.fc2.com/HP/slide/240518HT.pdf
分かりやすくまとめた漫画『簡単解説』:http://natureflow.web.fc2.com/HP/slide/240724KTkantan.pdf
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