原発事故は終わっていない!
観音寺川の桜回廊
国連科学委員会からの回答
4月23日深夜に、国連科学委員会(UNSCEAR)事務局長から、以下のメールが送られてきた。何度も督促していた結果だ。
その回答の要旨が以下。
1. 小生の個々の質問の回答を準備中で近々回答する。
(こう言い続けて、すでに4か月も経過している。(笑))
2. 今までのQ&Aは準UNSCEARへの質問の詳細は以下ご覧ください。
但し、数週間以内に国連科学委員会(UNSCEAR)のHPで公開する。
(これも実際の公開まで信用できない)
3. electronic attachmentsは4つを除き公開した。残りは5月上旬に公開予定。
(これも公開予定が数か月間も遅れている)
準備中の回答内容はどんなものになるのかわからないが、今までの主張(2020レポート)を単に繰り返す説明になるのだろうか?より矛盾点が明らかになれば、国連科学委員会を更に追及する為にも再々質問の必要性がある。
前半部分:https://nimosaku.blog.ss-blog.jp/2022-01-20
後半部分:https://nimosaku.blog.ss-blog.jp/2022-01-20-1
以下はみなさんへの協力依頼です。
★疑問点はUNSCEAR、原子力規制庁、放射線審議会、放医研、鈴木元氏らに直接質問しましょう
★声を出さないと、どんな場合(事故)でも、被ばくは無かった事にさせられてしまう。
★今後の3.11甲状腺こども被ばく裁判等で被害者が有利に闘える環境作りが非常に大事。是非、みんなで声をぶつけましょう!
ーー回答の原文が以下ーー
Dear Mr T,
Thank you very much for the continued interest in the UNSCEAR work.
The secretariat is working on a detailed response to your questions shortly. Also please note that the questions and answers have been prepared for upload on our new website scheduled to be online in a few weeks.
Meanwhile, you are advised to visit the supporting material to the UNSCEAR 2020/2021 report (electronic attachments, all except 4) - https://www.unscear.org/unscear/en/publications/2020_2021_2_Attachments.html.
The remaining are also being finalized for publication in early May 2022.
I hope that you find this information useful.
With best wishes,
Borislava
ーー小生からの質問ーー
Dear Ms. Borislava Batandjieva-Metcalf,
Thank you for your efforts and response.
It's already been three weeks since I sent the question email on March 21st. I also submitted additional questions on April 3rd.
I would be grateful if you could give me your views and explanations on this matter within 2 weeks.
In addition, I have requested that the Q & A of the questions and answers so far be posted on the UNSCEAR website,but it has not been realized yet.
By all means, I would like you to realize it, and I will request it again.Will the outreach plan in Japan scheduled for June be held as planned?
The first question submitted in late September last year, especially questions 1 to 18, has not yet been answered in a satisfactory manner.
Please answer these questions item by item as well soon.
UNSCEAR is obliged to give sincere and satisfying answers to my questions.
I hope you can do that.
Best regards,
××× ××× in Fukushima
喜多方市・日中線しだれ桜並木
米沢城址の桜
岳温泉の桜
3.11いわき伝承ロード
日本原電社長への手紙
苦言になってしまいました事ご容赦ください。大局的なご判断が重要です。ご意見賜れば幸甚です。
ダーチャ村と小浜城址の桜
横浜・里山ガーデン
東海第二原発は廃炉が妥当
東海第二原発は安全か
茨城県にある東海第二原子力発電所は都心から150km、半径50km圏内には水戸市や日立市があり人口は90万人を超える。このような原発は他には無い。再稼働差し止め訴訟で、水戸地裁は原告の要求を認め、原発差し止めの判決を出した。
その理由は
1.原発事故の被害の甚大性
2.原発事故収束の困難性
3.原発事故の要因となる自然災害等の予測は不確実
4.原発の安全性確保の為には、深層防護(第1層から第5層)が有効とされる。
5.第1層から第5の防護レベルのいずれかの欠落又は不十分な場合は安全であるとは言えず、周辺住民の生命、身体が害される具体的危険があるというべきである。
6.第5層達成の為には実現可能な避難計画の策定及び実行し得る体制の整備が必要。実現可能な避難計画や体制整備がなされているというには程遠い状態。第5層が欠けている。
以下は新聞記事の要旨を転載。
日本原子力発電は再稼働に必要な工事の完了時期を変更し、年内から再来年9月に先延ばしすると発表。首都圏唯一の原発、茨城県東海村にある東海第二原発は、4年前に再稼働の前提となる審査に合格し、日本原電は現在、津波などの災害や重大事故への対策工事を進めている。
工事の完了時期について、日本原電はこれまで、ことし2021年12月としていたが、2023年9月に先延ばしすると発表。
また、設置が義務づけられているテロ対策に必要な施設も、同じ時期に工事を完了するとした。
日本原電は先延ばしの理由について、原子炉を覆う格納容器の圧力が高まった際に内部の気体を外に出す装置「フィルター付きベント」を本体施設とテロ対策施設で共用化するほか、炉心で発生した熱を空気で冷やす設備を独自に設置するなど、工事内容の見直しを挙げている。
事故が起きた際の避難計画が多くの市町村でまとまっていないほか、地元の了解も得られておらず、具体的な時期は見通せない状況。
政府内閣府の避難計画やヨウ素剤配布計画の説明もあいまいであり、最悪の条件(通信網、交通網の遮断や渋滞、夜間や雨天時、そして大きな津波等)を考慮に入れていない杜撰なもの。
以下はたんぽぽ舎のメルマガの一部の要点を転載。
東海第二原発が危機に瀕している」 廃炉を迫っていこう
4/6(水)第45回原電前抗議行動報告 (その1)とめよう!東海第二原発首都圏連絡会
◎開会のあいさつ(要旨)
日本原電は追いつめられている。原電が1年9か月再稼働工事の終了期限を延期すると発表した。理由は 、安全 対策工事が遅れていると言われている。防潮堤の工事も進んでいない。控訴審もこれから始まるが避難計画もまだできていない。このままいけば控訴審でも敗北は必至。また、財政的にも破綻している。まさに原発は核と同じ、我々の存在を脅かしている。
◎主催者スピーチ(要旨)
日本原子力発電に経理的基礎がない。この日本原電は原発を2つしか持っていない。1つがこの東海第二原発、もう1つが福井の敦賀2号機。
今でも東電から2200億円も借りている。東海第二と敦賀2号、この2つの原発で維持費用が年間1千億、で、東海第二は東京電力と東北電力がお金を出している。敦賀2号は関西電力、中部電力、北陸電力、これがお金を出している。もしどちらかの原発が廃炉になれば、つまり敦賀2号が下に活断層があるので、ここが廃炉になれば日本原電はただ一つの原発だけになってしまう。
国会エネルギー調査会
3月23日、原発ゼロ・再エネ100の会の国会エネルギー調査会(準備会)が開催された。主催は立憲民主党の阿部知子議員。記憶と記録の為に掲載する。
阿部とも子議員(立憲民主)主催の、「国会エネ調(準備会)避難計画は子どもたちを守れるか?」の会合で、環境省・内閣府・規制庁からの説明を聞いて、原発事故時のヨウ素剤の配布計画、避難計画に至っては、まともに検討されていない事が明らかとなった。
モニタリングポストで放射性物質が空気中に舞っているか沈着したかの判断は付かない。福島県以外はモニタリングポスト数は極端に少ない。 現場を知らない官僚の無責任と無能さに呆れた。10年間何をしていたのか?こんな状況で原発の再稼働など認められない。
又、UNSCEAR2020レポートの日本語のプレスは、はなはだ誤解を生ずる内容で、未だに環境省はUNSCEAR2020レポートの全文を読んでいず、日本語のプレスだけで判断している事が明らかとなった。これが日本の官僚(政府)たち。実にお粗末。国に国民の命をゆだねる事はできない。
嘉田由紀子議員から小生のFBに以下のコメントを頂いた。
『××さん、私も同じ研究会に参加をしていて、ヨウ素剤配布方法など作文を読んでいるだけ、現場がどうなるのか、全く想像力がない。あきれました。小児甲状腺がんの多発は原発事故とは関係ない、とひたすら環境省が主張する根拠であるUNSCEAR2020レポートも、××さんのご指摘どおり、全文をよまず、プレスリリースのところのつまみぐいですましているということもわかりました。災害対策委員会の次の会議で、さらに追及します。』
避難計画は子どもたちを守れるか~1F事故の教訓から~がオンラインで開催された。http://blog.livedoor.jp/gempatsu0/archives/28427156.html
甲状腺がんの「過剰診断」論に関する質問に対し、環境省・放射線健康管理担当審議官室で甲状腺がんを担当する青木文子氏は過剰医療を否定した。
https://www.youtube.com/watch?v=dXXSdVmbNLg#t=1h17m
嘉田由紀子議員(元滋賀県知事)が 福島の甲状腺がんは過剰診断で、原発事故が原因ではないのか?と質問。
https://www.youtube.com/watch?v=dXXSdVmbNLg#t=1h21m6s
青木文子(環境省):検討委員会、UNSCEARなど専門家会議で「現時点では放射線の影響とは考えにくい」と評価されていると承知している。
崎山さん:過剰診断は科学的な根拠がない。2巡目でも増えてきた頃から過剰診断が言われるようになった。
嘉田議員:これは過剰医療ですか?
https://www.youtube.com/watch?v=dXXSdVmbNLg#t=1h24m22s
青木氏:過剰診断については明確な定義がされていない。甲状腺がんは一般的に進行が遅く、甲状腺検査によって、将来的に障害や死亡を引き起こさないがんを診断して治療してしまう可能性がある、という指摘がある。
一方で、甲状腺検査によって発見された甲状腺がんについては、学会のガイドライン等を踏まえて必要性を適切に判断した上で、医療の中で治療が行われているものと承知している。
阿部知子議員:そうすると、過剰医療ではないんですね。
青木氏:過剰医療についても正確な定義を把握しておりませんが、
阿部議員:必要な医療と認めておられますか?
青木氏:甲状腺検査によって発見された甲状腺がんについては、学会のガイドライン等をふまえて、必要性を適切に判断した上で治療されていると承知しております。
(以下、詳細は添付ファイルに)
崎山さん資料「政府が因果関係を認めない甲状腺がんについて」
大河陽子弁護士資料「東海第二原発運転差止判決の意義」https://drive.google.com/file/d/1T7uE5aDcqnkXIhdFdiVueBgq1M9qdxk4/view
大河弁護士によると、東海原発判決は「5層の壁」を逆手にとって、5層の壁が全て機能しないと安全は確保されないので、ハード面で例え完璧でも避難できなければダメという画期的判決。
鼻血論争に関する放医研からの回答
臨床的には放射線治療を受けた 患者さんで数 Gy を超えるピーク線量でおよそ 1 ヶ月後に顕著な皮膚変化が観察され、紅斑は 2Gy か ら生じ、創傷処置を有する皮膚潰瘍は 10Gy から生じるとされています。(4)
政府の科学的知見ほど非科学的
最近の小生のツイッターを転載する
★『政府の科学的知見ほど非科学的』甲状腺評価部会で4地域の放射能の解析手法を変えた理由を、部会長の鈴木元氏は「福島の被ばく線量はチェルノブイリと比べはるかに低く、地域差が出てくるはずがない。にもかかわらずどんな調整を行っても地域差が出てしまう」為、手法を変えたと説明。どこが科学的知見なのか?
★広島・長崎の残量放射線を測定していたアメリカ軍技術者は、上官から『君たちの任務は放射能の無い事を証明する事だ』『放射能の高くない事を証明せよ』『報告書に関する文書やデータは廃棄し、すべて忘れろ』と命じられた。福島でも同じような事が繰り返されている。
★アメリカでは『無知学』と呼ばれる、ずるい手法が使われている事がある。『無知学』とは当局が望まない情報の拡大を、何らかの手段で阻止する事。まさに日本政府や福島県(福島医大)、国連科学委員会、そしてそれをバックで支援する一部の御用学者達がそれに該当する。
★UNSCEAR2020レポートは、日本人は昆布摂取しているとの理由で甲状腺への取り込み率を西洋人の1/2に、日本の木造家屋では殆ど期待できない屋内退避効果を1/2にし、汚染された野菜を食べた可能性のある住民の経口摂取の初期内部被ばくを情報無いとして無視。更にすべて平均値で評価。
★甲状腺がん執刀医の福島医大・鈴木眞一氏の論文。過剰診断はしていない。過剰診断を防ぐ準備の上で 検診。発見した甲状腺癌はスクリーニング効果からハイリスクは少なく,非手術的経過観察の対象となる様な被胞型乳頭がんは認められず,微小癌症例でも全例浸潤型でリン パ節転移や甲状腺被膜外浸潤を伴っていた。
鈴木元氏からの回答届く
鈴木元氏にUNSCEAR 2020レポートの内部被ばくの矮小化について質問していたところ、以下の回答が届いた。忙しい中遅れての回答ではあったが、内容はともかく、個人の質問に対して回答頂いた事には感謝したい。
川俣町や飯館村での甲状腺検査測定の妥当性(時間経過していた為の測定誤差等)や、どのような(年齢・性別等)住民を対象にしたのか、高線量地域の浪江町津島地域住民や双葉町、大熊町住民は対象にしていない等、都合のよいデータだけを取り出して回答しているように思える。
甲状腺への取り込み率の1/2についても、こちらの問題には直接答えてきませんし、屋内退避効果の1/2等についても更なる吟味が必要。質問には直球では答えずに、都合の良い部分だけ切り取って答えていると印象。鈴木氏から送って戴いた論文も読み、更なる検証を実施する。
ーー鈴木元氏からの回答ーー
××様
個人の質問に答えていけるほど、暇ではないです。
福島県民の放射線リスクを推計する場合、線量の平均値が重要です。例外的に高い被ばく線量の方がいても、平均値を大幅に上げない限り、リスクに関係してきません。UNSCEARが平均値にこだわり、その不確実性の幅を議論するのは、妥当だと思います。
経口被ばくに関して、汚染野菜や汚染牛乳を摂取した人がいると思いますが、その割合が重要です。例えば、川俣町の甲状腺測定者は対象者約1900人の約3割の631名いました。その中に100mSvを超す甲状腺被ばく線量の方は含まれておりませんでした。また、飯舘村では対象者の約800名中約4割の315名が甲状腺測定を受け、100mSvを超す甲状腺被ばく線量の方は含まれておりませんでした。
仮に1900人の川俣の15歳以下の子供の10%(190名)ないし5%(95名)が汚染野菜や汚染牛乳を摂取していたとすると、その人たちが全員甲状腺測定された3割の子供に含まれない確率は、概算0.7の190乗ないし0.7の95乗と極めて低い確率です。飯舘は対象者の約800名の4割の315名が甲状腺測定を受けていたと思います。同じように計算すると、800名中10%(80名)の子供が315名の測定者に含まれない確率は,0.6の80乗とやはり極めて低い事になります。
甲状腺ヨウ素取り込みにに関しては、UNSCEARが0.5を採用した理由はUNSCEARに直接聞くべきです。私が答えるものではないと思います。東大の楠原先生のグループの論文Kudo論文およびプロシーディングをお知らせしたと思います。
Kudo論文は、ヨウ素代謝に関わる主要なパラメータを被験者のデータから確率密度関数として求め、モンテカルロシミュレーション法という統計解析手法をつかってヨウ素取り込み率の分布を推計した論文で、甲状腺ヨウ素取り込み率を18.6±6.0%と推計していました。薬学の薬物代謝で一般に行われている確立した手法です。
屋内退避効果は、JAEAのHirouchi氏らの東北地方の様々な建造年代の建物で実測した換気率をもとにした論文をベースにしていると思います。英文の論文を添付します。
ーーここまでーーー
鈴木元氏への質問は以下をご覧ください。
https://nimosaku.blog.ss-blog.jp/2022-03-31
岩波『科学』4月号の白石草さんの論考に以下(ツイッターで短くまとめ)があった。公式の場の発言とすれば、鈴木元氏は国民や福島県民を欺いている事になる。彼には科学者としての倫理観はまったくないし、政府からの要請?によって科学を捻じ曲げている危険人物という事になる。彼の甲状腺検査評価部会長辞任こそが、まっとうな科学になるはずです。
彼を評価部会長にしているのは、やはり影の環境省→福島県(医大も)への強い要請によるものであろうか?部会長選任の仕方が非民主的(民主的手法に見せかけ)である事からその可能性は大きいと言える。福島県は共犯者と言える。この部会長提案(説明もなく研究手法を変えた事)に対し、委員の成井香苗氏や富田哲(福島大)からは、異論や疑問が出されている。
以下は小生のツイッターから
★甲状腺評価部会で4地域の解析手法を変えた理由を、部会長の鈴木元氏は「福島の被ばく線量はチェルノブイリと比べはるかに低く、地域差が出てくるはずがない。にもかかわらずどんな調整を行っても地域差が出てしまう」為、手法に変えたと説明。どこが科学的知見なのか?政府の科学的知見ほど非科学
鈴木元氏の論文は間違いなく、このスタンスで捏造(歪められて)されている。彼の論文がUNSCEAR2020レポートの根幹となっている。UNSCEAR2020レポートのスタンスは鈴木元氏や明石真言氏と同じで歪められている事になる。
甲状腺がん多発は放射能の影響
◆甲状腺がん裁判勝利のために
小児科医 山田 真
2022年1月27日は歴史的な日であった。福島県に住み、福島東京電力原発事故以後に甲状腺がんになった若者(2011年当時18歳以下) 6人が、東京電力に賠償責任を求めて提訴したのだ。
わたしは2011年以来、こうした「健康被害に対して国や東京電力に責任を取らせるための裁判」を心待ちにしてきた。
しかしこれまで数々の医療裁判にかかわってきた私は医療裁判のむつかしさを身に染みて知っているだけに、健康被害を受けた人たちには裁判することを勧められないでいた。
だが今回勇気ある若者たちが提訴してくれたおかげで原発事故以後東京電力と国が犯した罪を明らかにできる端緒が得られたというべきで、わたしたちは全力で応援しなければならない。何としても勝たねばならない裁判なのだ。
そこで今、医療裁判はなぜむずかしいのかを説明しておこう。この国の医療裁判では一般に原告側が因果関係の証明をしなければならないことが多い。最近わたしが相談を受けた一例を挙げよう。
昨年11月に4か月の赤ちゃんが亡くなった。前日に4種類の予防接種を受けており、翌朝お母さんが目を覚ました時、赤ちゃんは亡くなっていた。解剖の結果、赤ちゃんのからだになんの異常も見られなかった。
解剖した医師は「突然死」だと言う。このケースで両親が予防接種事故として裁判を起こした場合、両親の側は赤ちゃんの死亡の原因が突然死ではなく予防接種であることを証明することを求められる。それは簡単そうに見えるが実は容易ではない。というよりむしろ無理なことなのだ。
脳研究者である池谷裕二氏は著書の中で次のように書いている。「私がとくに強調したいことは、サイエンス、とくに実験科学が証明できることは『相関関係』だけだと言うことです。因果関係は絶対に証明できません。『いやいや、私は因果関係も証明できるぞ』という立場の人いますか?もしいたら徹底的に私と議論しましょう」
(「単純な脳、複雑な『私』」) (講談社ブルーバックス)
今回の甲状腺がん被害者裁判では、福島の若者での甲状腺がん多発と放射線との因果関係を証明することが必要になるように思われるが、東京電力側は放射線以外の原因をいろいろ挙げて対抗してくるだろう。
その時原告側が放射線との因果関係を高度の蓋然性で証明する事は思いのほか難しいのである。本来は東京電力の側が原告の甲状腺がんが放射線と関係ないことを高度の蓋然性で証明しなければならないはずで、それが立証できなければ放射線と関係ありと認めることになるが、この国の司法は加害者側に立つことが多いのでこの形を取ったとしても予断を許さない。
ところで現在、私たちが全力で応援して勝たねばならない原発による医療被害を裁くもう一つの裁判が進行中である。「あらかぶさん裁判」という。あらかぶさんは42才の男性で、2011年当時、北九州市で鍛治工として働いていたが、福島原発事故を知り、10月に福島へボランティア的におもむいた。
そして福島第二原発の収束作業に従事し、その後2013年12月までの2年間、玄海原発、福島第一原発で働いた。そして2014年1月急性骨髄性白血病と診断される。
この発病は「福島原発でのずさんな被ばく管理のもとで事故収束作業に従事したため」として労災申請したところ、2015年10月に労災認定された。労災認定されたということは放射線により白血病になったという関連性が明確になったわけで加害者である東京電力、九州電力の責任を問う裁判を始めたわけだ。
しかし驚くべきことに、東電、九電の側は「労災が認められたといって放射線との因果関係が証明されたわけではない」とし、あらかぶさんの記録された被曝線量が100ミリシーベルト以下なので白血病にはならないなどとエビデンスなど全くない論説で反論している。
さらに放射線の発がんリスクは100ミリシーベルトから200ミリシーベルトをあびた時、あびない人の1.08倍であるのに対し、野菜不足の発癌リスクは1.06倍、大量飲酒の発がんリスクは1.4倍であるとして、あらかぶさんの白血病発病の原因はむしろ飲酒、野菜不足と考える方がよいなどと言っている。(ここでふれておくが現在学校で行われているがん教育では、「がんは一種の生活習慣病」という扱いになっていて、肥満、やせすぎ、飲酒、野菜不足、運動不足などが挙げられ、アスベストや放射線など環境因子にはふれられていない。子どもたちがこのようながん教育を受けていることもこの際知っておいてほしい。)
白血病の患者さんを前にして「あなたの白血病の原因は野菜不足だ」などと言う医者はいないと思うが、裁判でこんなひどい主張がされ、わたしの個人的な経験ではこうした主張がしばしば認められてしまうのがこの国の裁判の現状である。
今回の甲状腺がん裁判でも、国が「福島原発事故では健康被害はなかった」と最初から予断を持った宣伝をし事実を隠すために健康調査をほとんど行わなかったことを利用して東電側がひどい論理で甲状腺がんと放射線の因果関係を否定してくることが考えられる。
わたしたち市民は裁判所、東電の動向を監視しつつ応援に立ち上がる必要がある。今回、立ち上がった6人を全力で支えることが私たちの義務と言うべきだ。
わたしは1月27日にこの裁判を応援する応援医師団を立ち上げた。今、あちこちで応援の声が大きな声で発言され、この裁判の勝利のため全力で支えることを市民のみなさんに呼びかける。
(『救援』第635号2022年3月10日「救援連絡センター」発行より転載)
◆「甲状腺がん多発は原発事故が原因。因果関係は立証されている」
津田敏秀教授インタビュー 聞き手:本田雅和
中見出し・小見出しの紹介
◎「病気の多発が因果関係そのもの」
・「直ちに影響はない」?
・「放射線は発がん物質」
◎「著しい倍率上昇は認めながら因果関係には否定的」
・「暴露なし集団との比較」
・「恣意的な情報開示」
◎「内部被曝量が大きな影響を与えたことが判明」
・「補正でチェルノブイリに酷似」
・「過剰診断なら医療過誤」
(『週間金曜日』2022.3.25「15から21頁」より抜粋)