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原子炉倒壊による放射性物質の飛散

福島第一原発・1号機のペデスタルのコンクリート崩壊による原子炉の倒壊の可能性が指摘されている。原子炉が倒壊した場合には、燃料プールの壁を突き破る可能性もある。この場合亀裂が生じ、燃料プールの冷却水が流れ出してしまう事が想定させる。

この場合、燃料棒の溶融が始まり放射能の飛散等、どのような被害が想定させるのか、また住民はヨウ素剤の準備も含め、どのような事前対策をしておけばよいのか、原子力工学の専門家に質問をしてみた。

その結果を記憶と記録の為にメモ代わりに記載しておく。

【質問】
10年以上冷やされた燃料棒の水が無くなり溶融した場合の想定される放射性核種の放出はどのようなものが想定されますか?使用済み燃料棒の中には確かにヨウ素131は無いでしょうが、溶融によって新たに発生する事は想定されませんか?

以下の質問『ヨウ素131はほとんどないと思うが、ヨウ素剤の配布は必要か?ヨウ素129?使用済み燃料プールが倒壊すると避難しても被ばくし、他に防護することもできないということ?』に対する回答は如何でしょうか?
【回答】
実質的にはセシウム134と137、ストロンチウム90が問題になると思います。使用済み核燃料には大量のプルトニウム140が存在し、この核種は自発核分裂して中性子を放出します。この中性子による誘導放射性核種も問題になりますが、現在のフクイチの核燃料にどのくらい含まれるのかは、私は知りません。あまり気にされていませんが、ウラン、プルトニウムは化学毒性も強いので、周辺に飛散した際には、極めて厳重な対応が必要かと思います。

使用済み核燃料中には多種の長半減期核種も含まれますが、各核種毎の量は僅かですが、全部足し合わせれば相当な量になります。アルファ線を放出する超ウラン元素(例えばアメリシウム)の存在にも注意が必要です。

ヨウ素131は存在しないので、安定ヨウ素剤の配布は不用だと思っています。厳密にいうと、プルトニウム140の自発核分裂で放出された中性子によるウランの核分裂はデブリ内で起きているはずですので、極微量のヨウ素131が生成される可能性はありますが、無視できる程度です。


【再質問1】
『使用済み核燃料プールに保管されている核燃料も崩壊熱を発している。これらも炉心同様に冷却されなければ過熱して燃料の溶融を起こしうる。』とありますが、10年以上も冷やしていれば、核分裂までは進む事は無く、使用済み核燃料の成分だけが大気に飛び散る事だけを想定すれば良いという事ですね?ヨウ素129が残っている程度でしょうか?これは甲状腺に取り込まれる事は無いのでしょうか


【回答】
使用済み核燃料の中には長半減のアルファ線放出核種が大量に含まれるので、10年を経ても、冷却して除熱しなければ溶融する可能性はあると思います。先にも出しましたが、アメリシウムのような超ウラン核種(プルトニウムも超ウラン核種)は発熱源として重要です。

セシウムのようなベター線放出核種は透過力の強いガンマ線として、エネルギーの多くを系外に運び去るので、アルファ線放出核種よりは熱源としての効果は低いです。ヨウ素129はもちろんヨウ素131と同様に甲状腺に集積します。しかし、ヨウ素129は長半減期ですが核分裂による生成量は極めて僅かで、被曝の観点からは無視できると、思います。普通の測定法では検出出来ないほど微量です。
 
【再質問2】
今回の原子炉倒壊に対してのヨウ素剤の事前配布は必要ないと言う事ですね・・・
【回答】
はい、私は安定ヨウ素剤の配布は必要ないと考えます。もし、圧力容器倒壊、燃料プール崩壊となれば、放射線防護上最も危惧することは、いわゆるホットパーティクルと呼ばれた放射能汚染粒子(粉塵)の大気中への飛散です。

体内被曝を防護する上では、適切なタイミングでの高性能な防護マスク(新型コロナ対応程度でいい)と防護メガネの着用が必要になるのではないでしょうか。現場の温度はそれほど上昇するとは思えませんので、3.11の時のように放射性セシウムやストロンチウム90が揮発(気化)して大気中に放出されるリスクはほとんどないと考えています。

核燃料デブリが物理的に破砕される可能性が高いので、先にも書きましたが、ウラン、プルトニウム、超ウラン核種などアルファ線放出核種がホットパーティクルとして大気中へ飛散し、それを吸引することによる内部被曝が、放射線防護上、最も重要な事象になると思います。


【再質問3】
『適切なタイミングでの高性能な防護マスク(新型コロナ対応程度でいい)と防護メガネの着用』を避難と同時に徹底させる(規制庁や福島県からの注意喚起が必要。そうはいってもやらないでしょうが??北朝鮮のミサイルの被害確率よりは、よほど倒壊の確率の方が大きいのですが・・)と言う事ですね。ホットパーテクルの飛散距離(対象半径)はどれぐらいを考慮すれば良いでしょうか?東京・横浜も対象??

【回答】
倒壊の状態や気象条件に依存すると思いますが、極微細な粉塵の生成はそれほど多くないと思いますが、直径がマイクロメートルレベルですと何百キロも飛散します(私は大阪で核燃料由来のホットパーティクルを検出しています。黄砂の来襲をイメージされてもいいと思います)。3.11の時の放射性セシウムの沈着量の分布なども考慮すれば、とりあえず半径100㎞くらいの地域が要注意だと考えます。
 
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事前の対策はコロナ感染対策と同じようなもの。外出時のゴーグルは勇気が必要で、どれぐらいの期間が必要なのかも重要なポイント。数か月?それとも数年??年単位になるとコロナと同じく社会活動にも影響を与えてしまう。
 
従い今回の原子炉倒壊時の事前ヨウ素剤配布は必要なさそうなので、福島県自体が検討する事、学ぶ事も重要なので、状況を見てからヨウ素剤配布の要望を撤回する事にしたい。

福島県への要請事項は以下ご覧ください。

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