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原発事故の教訓生かせ

1分1秒争う3.11の原発事故の時の民主党政権における危機管理に比較しても、数段も劣るアベ政権のお粗末な危機管理には呆れる他ない。この無能・無策・無責任のアベ政権の危機管理を見ていると、民主党政権時の危機管理が、まずは人の命を最優先したかがわかる。その後、アベ政権が引き継いだ政策はふくしま切り捨て、人権無視、命軽視の政策が今でも続いている。
元原子力委員会委員長代理 鈴木達治郎さんのご了解をいただいたので掲載する。長崎新聞にも掲載された。


以下鈴木達治郎さんのフェースブックからの転載

共同通信が配信していただいた論考「コロナ危機と原発事故の教訓」が4月18日付の長崎新聞に掲載されました。
5つの教訓(1.「命を守る」を最優先に 2.「代替案」を検討せよ 3.「世界の英知」を活用せよ 4.「科学顧問会議」設置を 5.「透明性」と「信頼性」の確保を)を提起させていただきました。ご一読ください。

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(以下テキストです)
大型評論「新型コロナと文明」
◎原発事故の教訓生かせ
 人間性を忘れるな、元原子力委員会委員長代理 鈴木達治郎

「デジャビュ(既視感)」…。新型コロナウイルス感染症の拡大と政府の対応や世論の動き、社会の反応を見ていると、どうしても東京電力福島第1原発事故時の対応が重なって見える。
私は感染症専門家ではないので感染症対策の是非を論じることはできない。ただ2011年当時、政府の一員として原発事故を経験した者として「あの時の教訓が生かされているのか」との視点から、現下の危機への示唆を考察してみたい。

 ▽第1の教訓 「命を守る」を最優先に
いま最も大事なことは何か。危機に際し、国民の命を守ることの重要性は何よりも優先されるべきだ。これは国民あるいは社会全体への「リスクを最小化する」と言い換えることもできる。
問題は、あるリスクを最小化させる施策が、別のリスクを高めることにつながる可能性がある点だ。その結果「リスクのトレードオフ(相殺)」や「バランス」を考慮する傾向が伴う。

「リスクのトレードオフ」は価値観の差異や、政治力学が作用するため、政策決定者の判断が揺らぎがちになる。国民よりも「経済を守る」、ましてや「政権を守る」といった間違った基準で危機管理対策を取られては、何をかいわんやだ。
具体的には、命を守る対策の経済コストに配慮して対策の実施を引き延ばしたり、その実効性を担保するためのコスト負担をためらったりしてはならない。

例えば、今回のように事業者や住民に自粛要請をするのであれば、その影響に対する「補償」はセットで考えなければいけない。「経済対策」ではなく、命を守るためのコストとして考えるべきだ。
原発事故対応の時も、汚染水処理に見るように、最もリスクを下げる案よりも当面のコストを最小化する案が採用されることがしばしばあった。そうした対策が結果的に、リスク最小化にならなかった反省が生かされていないのではないか。

 ▽第2の教訓 「代替案」を検討せよ
安倍晋三首相は新型コロナウイルスに対処する改正特別措置法に基づき、緊急事態宣言を出したが、これがあたかも「最後の切り札」かのような印象を与えた。しかし、緊急事態宣言はあくまでウイルス対策を有効に進める「手段」であって「解決策」そのものではない。
果たして今回の緊急事態宣言で示された様々な施策について、同じ目的を達成することのできる代替案は十分に検討されたのだろうか。2月末に首相が突然表明した一斉休校要請も代替案を検討した気配がない。

危機管理に追われる中で代替案の検討は本当に難しい。時間的余裕がない状態で意思決定に迫られると「実現可能な策」から実行していくしかない面もある。だが、今回の緊急事態宣言まで時間的猶予は十分あった。原発事故の際もさまざまな制約条件の下、代替案の検討がおろそかになることがあったが、その反省が生きていないというのが実感だ。

 ▽第3の教訓 「世界の英知」を活用せよ
新型コロナ対策は一国だけで解決しようとしても無理だ。感染症対策には世界の英知と国際協力が必須だからだ。各国の事情が異なる点を考慮しても他国の対策が参考になることは多いだろう。
原発事故の対応で私が最も重要と感じたのが、世界の英知を集めることだ。実際、世界の専門家や産業界から日本に対し多くの助言や援助の申し出があった。ところが「日本の問題は日本で解決すべきだ」といった心理が働いたのか、廃炉の措置も真に世界の英知を活用できる体制が構築できたとは思えない。

新型コロナ対策も同様だ。PCR検査が日本では海外に比べ極端に少ない。本来なら検査数を増やすことが原則であり、世界保健機関(WHO)もそう勧告していた。世界で検査をかなりのスピードで実施している国々の知見から学ぶこともできたはずだ。
日本の特殊な事情があるからといって、PCR検査の数を抑制すれば、結果的に守るべき命が守られなくなる。リスク最小化や代替案の比較の教訓とともに、ぜひ、世界の英知を活用してもらいたい。

 ▽第4の教訓 「科学顧問組織」設置を
危機に際してはなおのこと、政策には科学的根拠が不可欠だ。多様な選択肢の中でどれを選ぶべきか。その根拠となる科学的知見が欠けていると、政策の実効性は保証されない。
そのためには、専門知を政策に有効に反映させる体制が鍵となる。新型コロナ対策で政府が設置した専門家会議は、その独立性と権限が担保されていないように見える。

原発事故の時、参考として紹介されたのが、英国の「緊急時科学顧問会議」だ。これは英国が狂牛病事件の後、科学と政策の関係を改善するために設置した機関だ。首席科学顧問が危機に際して最も有用と思える専門家を集め、独立した立場から政府に助言を行う。
日本も独立した権限を持つ同様の科学顧問組織を早急に設置すべきだ。

 ▽第5の教訓 「透明性と信頼性」の確保を
最後に最も大切なのが、政策決定の透明性とその信頼性だ。原発事故時に私が痛感したのは、原子力政策に対する「信頼の喪失」だった。国民の信頼が得られなければ、どんなに良い政策でも実効性は乏しい。
だからこそ、意思決定プロセスの透明化、そのための徹底した情報公開、市民やマスコミの質問に丁寧に答える双方向の「リスクコミュニケーション」が絶対的に重要なのだ。そして代替案や科学的根拠を明示し、専門家の知見を反映させる意思決定プロセスが不可欠となる。

政府の施策に対し、客観的に検証する「第三者機関」の設置も欠かせない。危機時に第三者機関が客観的評価を行う時間的余裕はないかもしれない。その場合、危機終息後に政策の検証ができるよう、全ての記録を保存する必要があることは言うまでもない。
会議の議事録や提出資料、データなどを保存しておかなければ、政策の検証は不可能だ。今回の対応で、この点がおろそかになっているのではないかと不安を覚える。

   ×   ×

以上、福島事故の教訓から、今回の新型コロナ対策を俯瞰してみた。失敗しないようにすることは大事だが、失敗から学ぶことがもっと大事だ。今こそ原発事故の教訓を生かしてもらいたい。そして、1954年のビキニ水爆実験後に核兵器と戦争の根絶を訴えた「ラッセル・アインシュタイン宣言」の有名な一節を想起してもらいたい。
 「人間性を忘れるな、他のすべてを忘れても」

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