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『汚染水海洋放出に関する問題点と疑問』に対する東電からの回答(前半)

汚染水海洋放出に関する問題点と疑問(第1版)』を6月上旬に提出していたところ、前半部分の疑問について本日回答があった。

内容は貧弱な回答で、今まで言ってきた事をただ繰り返すのみ。東電は政府(経産省)は科学的に丁寧に説明すると言っているが、単なる口先だけで科学的とは程遠い内容。これでは国民の疑問に答えた事にはならない。

根拠となるデータを示す事なく、結論のみを回答する。しかも個々の質問に答えることなく、都合の悪いものは東電が公開している膨大なデータを見ろと、そのURLだけを示してくる。東電も測定しデータを掲載する人はいても、それを分析する人材がいないのだろう??これが国民に丁寧で科学的な説明とは思えない。1か月も待たされてこの程度の回答には失望せざるを得ない。

この回答は東電内の多岐に渡る関係部門からの回答を窓口部門が取りまとめたものにしては、回答があまりにも貧弱。東電には科学的・生物学的にわかる専門家人材がいない事がこれで明らかとなった。呆れる他ない。

現在、『汚染水海洋放出に関する問題点と疑問』は第3版になっており、今回の回答を踏まえて、追加質問をする予定。

質問(前半)は以下をご覧ください。

https://nimosaku.blog.ss-blog.jp/2023-06-12

質問(後半)は以下(東電は7月3日現在未回答)
https://nimosaku.blog.ss-blog.jp/2023-06-12-1

  ーー以下が東電からの回答ーーー

×× ×様

当社・福島第一原子力発電所の事故により、今なお、福島の皆さまをはじめ広く社会の皆さまに、大変なご負担とご心配をおかけしていることにつきまして、あらためて心より深くお詫び申し上げます。

さて、お問い合わせいただきました件(前半)について、お時間を頂戴しまして恐縮です。下記のとおり、ご回答させていただきます。

【1.約束違反】

★東電と政府は福島県漁連の「タンクに溜まっている水は国民の理解がないかぎりいかなる処分も行わない」との要請に対し、「関係者の理解なしにはいかなる処分も行わない」と約束した。

しかし政府は海洋放出方針を決定してから、関係者の理解を得ます。説明を尽くしますと言っている。明らかに約束違反ではないか。

⇒(回答)
〇まず、政府が海洋放出を決定したのは、「ALPS汚染水」ではなく、「ALPS処理水」です。また、安全基準を満たさない状態での放出がなされることはありません。

〇福島県漁連に対して回答した方針に変わりはありません。

〇ALPS処理水放出に係る実施主体である当社といたしましては、当該の文書回答も踏まえまして、引き続き、安全な設備の設置や運用などの計画に基づく安全確保や、科学的根拠に基づく国内外への情報発信、海域モニタリング強化、風評対策など、政府の基本方針を踏まえた取組を進めるとともに、ご懸念やご関心に向き合い、福島第一原子力発電所の廃炉・処理水等対策に係る当社の考えや対応について、ご説明をさせていただく取組を重ねてまいります。

【2.世論は海洋放出反対・公聴会の開催を!】

★福島県内の多くの自治体は海洋放出に反対している。2020年2月の福島県内の世論調査でも57%が海洋放出反対している。GXの原発推進も含め、日本では政策決定の在り方に民主主義が徹底的に欠けている。海外では市民の意見を聴いて原発政策を決定している。まずは福島県内数か所で経産省主催の公聴会を開催したらどうか?

⇒(回答)
回答する立場にございません。

【3.なぜ汚染水は増え続けるのか?】

★なぜ汚染水は増え続けるのか?大金を投資しつくった凍土壁は役立っていない?コンクリートのような工法で広域の止水壁を作って地下水を止めるべきとの専門家の意見もでているが、なぜ行わないのか?凍土壁の失敗を認めたくない為に汚染水が増え続け、海洋放出するとすれば本末転倒ではないのか

⇒(回答)

〇陸側遮水壁、サブドレン等の重層的な汚染水抑制対策により、2014年5月は1日当たり540m3程であった発生量が、2022年度実績では90m3/日と確実にその効果は現れています。現在は、中長期ロードマップの2025 年内目標である「汚染水発生量を100m3/日程度に抑制」達成に向け、陸側遮水壁やサブドレンの確実な運用と合わせて、屋根雨水対策等の重層的な対策を進めているところです。

〇具体的には、建屋への雨水流入対策は、今後も1-4号機山側のフェーシングや1号原子炉建屋の屋根補修対策を行う計画であり、計画通りに実施していくことで、建屋流入量は更に抑制可能と考えています。

〇今後、局所的な建屋止水の効果、建屋外壁止水の検討結果、燃料デブリ取り出しなどに関する建屋周辺の廃炉作業の状況も踏まえて、2028年度までに約50~70㎥/日まで、汚染水の発生量抑制を目指してまいります 。

【4.処理水の定義と測定結果の情報公開】

★政府による処理水の定義は『トリチウム以外の放射性物質が基準を下回っている事』となっている。タンクに留められている7割近くは基準値を超えている(ストロンチウム90、ヨウ素129、セシウム137、さまざまなプルトニウム等)ので、処理水ではなく『汚染水』という事で良いか?すべてALPS処理水と言っている事は情報操作ではないか?

★すべてのタンクについて62核種とトリチウム、そして炭素14の測定結果が公開されていない。(3つのタンク群のみ公開)公開されていないと言う事は汚染水の全容がつかめない状態で、海洋放出ありきで良いのか?全容をつかむまでは、海洋放出は止めるべきではないか?また未公開データはいつまでに公開するのか?

⇒(回答)

〇「ALPS処理水」とは、トリチウム以外の放射性物質が、環境へ放出する場合の規制基準値を確実に下回るまで、多核種除去設備等で浄化処理した水(トリチウムを除く告示濃度比総和1未満)を「ALPS処理水」と定義しています。

〇環境へ放出する際には、約7割にあたる規制基準を満たしていない水(処理途上水)は、二次処理を確実に実施し、トリチウム以外の放射性物質について告示濃度限度比の総和を1未満とする方針です。

〇当社が測定した全てのデータは、当社のウェブサイト「福島第一原子力発電所における日々の放射性物質の分析結果」に掲載されています。

〇また、タンク内の「ALPS処理水等」の測定結果については、処理水ポータルサイトに整理した形でお示ししています。

福島第一原子力発電所における日々の放射性物質の分析結果https://www.tepco.co.jp/decommission/data/daily_analysis/index-j.html

貯蔵タンクエリア毎の放射能濃度https://www.tepco.co.jp/decommission/progress/watertreatment/images/tankarea.pdf

【5.ALPSの機能について】

★タンク保管の7割は汚染水。ALPSでの処理水は3割。ALPSは「使用開始前検査」を受けていない試運転状態。法的には「仮設」。ALPSのフィルターが破損したり、信頼性・安定性に欠ける。基準を超える7割の汚染水の割合が減っていないが、ALPSが正常に機能しているのか?

(回答)

〇既設、増設、高性能ALPSとも使用前検査は全て完了しています。

〇多核種除去設備は、汚染水に含まれる62種類の放射性物質(核種)を、環境へ放出する場合の国の基準以下の濃度に低減する浄化能力があり、現在の運用実績としては、規制基準を満たすまで浄化処理しています。

【6.トリチウムの危険性は有機結合型OBT】

★トリチウムの危険性はOBT(有機結合型トリチウム)にある。HTO(トリチウム水)は生物体の中に入ると炭素などの有機物と結合して有機結合型トリチウム(OBT)に変わる。細胞はOBTを水素原子とみなし高分子を構成する。

ところがOBTは核壊変しヘリウムに変わってしまう。
ヘリウムは結合を担う能力は無いので、OBTを使った高分子結合は壊れ、細胞は破壊される。これがトリチウムの危険の実態。更にOBTはHTOに比べ20~50倍滞留時間が長い。OBTは染色体など重要器官で使われ、十分DNAを傷つける。

★トリチウムOBTの人体への影響は未だに、未確認。論文も無い。有機結合型トリチウム(OBT)の人体(細胞レベル)への影響に関する論文等は無いはずです。(短時間の魚類への影響は存在するが完全ではない?)。論文があるなら提示ください。OBTに関してはIAEA、東電、規制庁はどのような見解も示していない。

(回答)

〇トリチウムの健康影響については、UNSCEAR(国連科学委員会)が2016年報告書附属書Cで、トリチウムの性質、体内動態、生物効果、作業者や公衆の疫学的データなどを整理し、見解を述べています。

〇当社が実施した、「ALPS処理水の海洋放出に係る放射線環境影響評価報告書」では、摂食する海産物中のトリチウムの割合につき、10%が有機結合型トリチウムである場合をベースケースとして評価するだけでなく、100%全てが有機結合型トリチウムとした場合の評価も実施しており、被ばく評価結果にほとんど影響がないことを確認しています。

【7.ICRPリスクモデルの欺瞞・線量係数矮小化】

★ICRPのリスクモデルでは電離エネルギーは体全体に、または臓器や組織に、また細胞全体に平均・均一に負荷すると仮定。しかし実際の内部被ばくでは、エネルギーは局所・部分的に集中的に負荷し、細胞を、臓器を破壊していく。ICRPの平均化概念は内部被ばくでは全く起こり得ない。ICRPのリスクモデルでは全く想定していない”元素変換(核壊変)による細胞破壊が起きる。

★ICRPのリスクモデルはエネルギー量(物理量)だけを問題にしている。人体の細胞にどのような影響をあたえるかという細胞科学的観点、あるいは体内に入った時にどのような化学的反応をみせるかといった化学的な観点は一切無視。徹底的に放射線物理学の観点からしかみていない。科学的には、いびつな体系。

★『トリチウム(HTO)無害論』はICRPの1Bq換算係数(1.8×10⁻⁸msV)が実情とはかけ離れている事。例えば年間100万BqのHOTを摂取しても18μSvと小さい。朝日や毎日のトリチウム無害論もすべてこの換算係数からでている。ICRP内部でもこの換算係数が科学的に妥当ではないとの意見が何度となくでている。しかしICRP勧告は頑として修正しない。しかしこの換算係数は5倍~10倍程度が妥当との専門家(ICRPの専門家も含め)の意見がある。

⇒(回答)

〇IAEAやICRPでは、世界中で公表された複数の放射線障害に係る論文を精査し、信頼性の高いデータに基づき各基準や勧告を取りまとめていることから、非常に信頼性が高いものと考えています。

【8.健康被害の実態について】

★カナダの重水炉型原発周辺では、排水されるトリチウムで健康被害を指摘している調査結果や論文がでている。特に激しく細胞をつくる4歳以下の子ども・幼児・乳児・あるいは胎児にその被害は集中した。

★日本の玄海原発周辺でも住民の白血病が多発している調査結果がある。1998年~2007年の調査では玄海町の白血病による死者数は人口10万人あたり30.8人(前半の5年平均)~38.8人(後半の5年平均)と全国平均(5.4人~5.8人)の6倍~7倍。また原発から15km離れた唐津市でも全国平均の3倍程度。魚介類、飲料水、空気中に浮遊するHTOが原因と考えられる。

★厚労省が発表した平均寿命でワースト10には、下北半島の六ケ所村、東通村、むつ市等核燃料サイクル工場が設置されている周辺の自治体の寿命が短い。これはトリチウム海洋放出に関係していないか?トリチウムに汚染された魚介類、飲料水、空気中に放出されたトリチウムを吸入した事と関係あるのではないか?ないとするなら短寿命の要因は何か?

⇒(回答)

〇トリチウムによる人体等への影響に関する疫学的調査は、大気圏核実験が頻繁に行われた1950年代から世界各地で行われているほか、原子力発電所周辺でもさまざま行われ、その結果として十分の余裕を持ちつつ現在の規制体系が作り上げられてきていると承知しています。

したがって、国際的な考え方に基づく現状の法令を遵守することにより、懸念する放射線障害は発生することはないと考えます。

【9.燃料棒に直接触れた汚染水の海洋放出の前例はない】

★「ALPS処理水と、通常の原発排水は、まったく違うものです。ALPSでも処理できない核種のうち、11核種は通常の原発排水には含まれない核種です。通常の原発は、燃料棒は被膜に 覆われ、冷却水が直接、燃料棒に触れることはありません。でも、福島第1原発は、むき出しの燃料棒に直接触れた水が発生している。処理水に含まれるのは、“事故由来の核種”です」(山本拓議員)

https://www.nikkan-gendai.com/articles/view/life/287910/2
溶融燃料と接触した水の海洋放出は世界的に前例があるか?前例がないなら安全だと言える確証はまったくない。デブリに触れた汚染水の海洋放出はあり得ない。

⇒(回答)

〇放射性物質を原子力施設から環境中へ放出する際に、管理対象とする放射性物質の種類については、国の規制基準の下、施設毎(事業内容、炉型など)に定められています。

〇環境へ放出する場合には、トリチウム以外のそれら放射性物質についても規制基準以下の濃度であることを確認することとしており、放射性物質を環境中へ放出する際の国の規制基準を満たす、という観点では、他の原子力施設から排水される水と、変わりはありません。

【10.トリチウム以外の放射性核種や溶融した物質の検証がされていない】

★政府は通常の原発でもトリチウムが発生し、海洋放出しているから、基準値以下に薄めれば問題ないとの説明をしているが、福島第一の場合は溶け落ちた核燃料に触れた水である事。政府はこの問題をトリチウムだけにファーカスしている。

海洋放出基準は放射性核種に限定し、核分裂した安定テルル、溶解した金属特にステンレス鋼材やジルコニウム,スズ等、さまざまな有機物、コンクリート、腐食酸、硫酸還元菌、放射性炭素等は含まれていない。本件について経産省、東電、IAEA,規制庁はどのように判断しているのか?

⇒(回答)

〇ALPS処理水の海洋放出に当たっては、希釈前の段階でトリチウム以外の放射性物質が規制基準(告示濃度比総和1未満)を満足していることを確認するだけでなく、水質汚濁防止法に基づき定められた福島県条例の一般水質基準の対象項目について、自主的に放出の都度満足していることを確認します。

【11.IAEAと日本政府は出来レース】

★日本政府はIAEAを第三者機関の評価としていますが、IAEAと日本政府は海洋放出ありきで日本政府と協定を締結しているとすれば、公正・中立な評価は不可能。原発推進のIAEA以外の第三者機関の査察も受けるべきではないか?

『IAEAと日本政府は出来レース』は以下ご覧ください。
https://nimosaku.blog.ss-blog.jp/2023-05-08

※IAEAの立場は福島第一の汚染水の海洋放出を禁止すれば、世界中の原発を止めざるを得なくなる為、福島第一の汚染水の海洋放出を認可するしかないという立場。(IAEAは原発推進の立場)

⇒(回答)

IAEAのタスクフォースは、IAEAおよび世界各国(中国・韓国・ロシア等を含む)の国際専門家で構成されております。当社はレビューに真摯に対応してまいります。

 以上

当社は、原子力事故の当事者として、事業運営への信頼回復に努めるとともに、「復興と廃炉の両立」の大原則のもと、福島第一原子力発電所の廃炉・汚染水・処理水対策を、安全確保を最優先に一つひとつ着実に進めるとともに、処理水に関する正確な情報を、社会のみなさまへ迅速かつ透明性高くお届けする取組を徹底してまいります。

2023年7月3日

東京電力ホールディングス株式会社

 

 

 

 

 

 

 


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