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海洋放出に規制庁はどう評価したか?

明日、郡山市で汚染水海洋放出に関し、規制庁と東電と市民との意見交換会が開催される。そこで規制庁に対する質問をまとめてみた。

日本政府の正当化に関する説明はまさに『合意の捏造、歪曲』満載であり、日本の法律および国際合意(2030アジェンダ)違反??

日本政府への疑問

1.   海洋放出を閣議決定以前に、政府と東電はどのようなプロセスで正当化を検討したのか?その定量的な検討プロセスとその結果が明らかになっていない。詳細を明らかにすべき。

原子力規制庁はどう正当化をどう評価したのか?評価したとするなら議事録を開示願いたい。

IAEAは『正当化の責任は日本政府にある』『日本政府がたどった正当化プロセスの詳細に関する評価は含まれていない。』としている。

 2.日本政府の「正当化」主張

202361日にオンラインで実施された集中対話の中で、PIF専門家パネルのメンバーの人が、計画されているALPS処理水の排出の正当性の問題を提起した。その際、彼はIAEA安全基準シリーズNo.GSG-8(公衆および環境の放射線防護)の2.11項に言及した。同項は以下の通りである:

  2.11. 計画的被ばく状況において、正当化とは、ある行為が全体として有益であるかどうか、すなわち、その行為を導入または継続することによって個人および社会に期待される便益が、その行為によって生じる害(放射線による不利益を含む)を上回るかどうかを判断するプロセスである。便益は、個人と社会全体に適用され、環境への便益も含まれる。放射線の害は、害全体のほんの一部に過ぎないかもしれない。このように正当化は、放射線防護の範囲をはるかに超え、経済的、社会的、環境的要因の考慮も含む。

 1)専門家は、日本政府(GOJ)、特に原子力規制委員会(NRA)が、GSG-82.11項に従って、ALPS処理水の排出に起因するPICsを含む近隣諸国への利益と損害を考慮したかどうかを質問した。

 2) 61日の対話終了時に、PIF事務局は日本側に対し、問題の点について日本が提供することを望む説明や文書を提供するよう要請した。本ノートは、日本政府の立場を明確にするため、この要請に応えて作成したものである。

 その文書の一部が以下。

  【6.29政府文書】 

10:
GSG-92.3項:「正当化は全体的な実施に適用されるものであり、排出のような個別の側面には適用されない」。日本政府は、ALPS 処理水の排出は「個々の側面」に相当し、福島第一原子力発電所(FDNPS)の廃炉は「全体的な慣行」に相当すると理解している。

11:
従ってALPS処理水の海洋放出に関する日本政府の見解は、FDNPSの廃止措置プロセス全体(ALPS 処理水の海洋放出を含む)についてその正当化を判断すべきである。

これに対しIAEAの包括的報告書には以下の記載がある。

『処理水をどのように扱うか、またその決定がどのように正当化されるかを決定する最終決定権は日本政府にある。とはいえFDNPSに貯留されるALPS処理水の管理方法の最終的な選択の 正当性は、多くの利害関係者にとって極めて重要であり、日本政府から明確な説明がなされるべきものである。

 すなわち、IAEAは海洋放出に関する正当化については日本政府が明確に説明すべきと、真っ向から日本政府の海洋放出は個別問題とする事を否定している

IAEA安全基準GSG-92.3項の原文が以下。

2.3. Justification applies to the overall practice and not to individual aspects of the practice, such as discharges, which can be authorized or exempted from the requirement for an authorization only if the practice as a whole is already regarded as justified.

【日本語訳】

2.3. 正当化は、実施全体に適用されるのであって、排出のような実施 の個々の側面には適用されない。これらの側面は、実施全体がすでに正当化され ているとみなされる場合にのみ、認可されたり、認可の要件から免除されたりする。

3. 海洋放出は日本の法令と国連が推奨するSDGsの14章『海の豊かさを守ろう』に違反。 規制庁はどう評価したのか?

水産資源保護法違反???

(水産動植物に有害な物の遺棄の制限等に関する命令)

第四条 農林水産大臣又は都道府県知事は、水産資源の保護培養のために必要があると認めるときは、次に掲げる事項に関して、農林水産省令又は規則を定めることができる。

一 水産動植物に有害な物の遺棄又は漏せ()()その他水産動植物に有害な水質の汚濁に関する制限又は禁止

  ある専門家は「海洋放出は水産資源保護法違反だ」と指摘。同法は、第4条で「水産動植物に有害な物の遺棄又は漏せつその他水産動植物に有害な水質の汚濁に関する制限又は禁止」を明記している。

水産生物に悪影響を及ぼす汚染物質を垂れ流す東電の行為は犯罪行為です。政府や東電幹部など海洋放出の責任者は刑事訴追されるべきです。実際に、工場から廃液を垂れ流したことで実刑になったケースもあります。」

 http://taminokoeshimbun.blog.fc2.com/blog-entry-733.html?fbclid=IwAR3pEsn42xiJozF1WlAaokdrazSX8pvPDgFX70DxuwFFkxdAOvYsKObq2is

 尚、水産資源保護法では省令又は規則を定める事ができると言う事は、海洋放出は省令や規則が無い現段階ではには違反していないようにも受け取れる。農林水産省は省令を出す事は無い。、福島県もも自主性がは無い。その為弁護士らと相談し、県漁連などが訴訟を起こす事ができるかどうか??・           

SDGs違反

外務省のHPには以下の記載がある。

 20159月の国連サミットで加盟国の全会一致で採択された「持続可能な開発のための2030アジェンダ」に記載された,2030年までに持続可能でよりよい世界を目指す国際目標です。

17のゴール・169のターゲットから構成され,地球上の「誰一人取り残さない(leave no one behind)」ことを誓っています。SDGsは発展途上国のみならず,先進国自身が取り組むユニバーサル(普遍的)なものであり,日本としても積極的に取り組んでいます。

 海洋放出はSDGsのアジェンダと逆行し、違反しないか?規制庁はどう評価したのか?

  SDGsの『14.海の豊かさを守ろう』には以下の目標が記載されている

 14-1:2025年までに、海洋ごみや富栄養化など、特に陸上の人間の活動によるものをふくめ、あらゆる海の汚染をふせぎ、大きく減らす

※富栄養化:水の中に、プランクトンなどの生物にとって栄養となる成分(リンやちっ素など)が増えすぎてしまうこと。赤潮の原因になるなど、生態系に影響を与えるといわれている。

14-2:2020年までに、海と沿岸の生態系に重大な悪い影響がでないように、回復力を高めることなどによって、持続的な管理や保護をおこなう。健全で生産的な海を実現できるように、海と沿岸の生態系を回復させるための取り組みをおこなう。

4.希釈の理由の明示が無い。(注1)

IAEA報告書は「希釈が放射線防護と安全の目的で行われることを意味しないように注意する必要」があり、「希釈の理由を明確に示すべきであると助言した」(41頁)と述べている。「薄めるから安全」は成り立たないのである。

政府と東電は希釈の理由と正当化について説明されていない。絶対量は変わらない。本件、規制庁はどう評価したのか?
尚、基準値は電力会社の都合で決めた値で、国が追認したもの。

5.海洋放出の手段は最も高価
海洋放出にかかる費用はいくらと見積もっているか?タスクフォースで経産省の事務局が提示したそれぞれ対策費は間違っていないか?海洋放出を誘導する為の虚偽データではないか?その見積もり条件に風評被害対策費や海外からの輸入制限による損害、国内外から訴えられた場合の賠償金は含まれていない。

この事によって、34億程度と最も安い海洋放出の手段を選んだ日本は、風評被害対策費等に4,150億円(数年間?国内だけではすまず輸出分の補填も含めればこれですまない。)中国からの輸入制限(昨年の海産物の中国への輸出額は870億円/年間)と、総額で最も価格の高い手段を選んだ事になる。詳細は以下ご欄ください。https://www.meti.go.jp/earthquake/nuclear/hairo_osensui/pdf/sesaku_2301.pdf

規制庁はタスクフォースの虚偽データをどう評価したのか?タスクフォースはメンバー入れ替えてやり直しすべきではないか?

6.タスクフォースの検討には最初から大型タンクの設置土地拡大の方策が含まれていなかった。規制庁はタスクフォースの検討結果にどう関与したのか?この検討結果や検討プロセスをどう捉えてか?タスクフォースはメンバー入れ替えてやり直すべきではないのか?

 7.海洋放出時の拡散シミュレーション結果は明確になっていない。

北太平洋諸国(アメリカ、カナダ、特にハワイ)や太平洋諸国、日本の漁連や市民にどう説明したのか?経産省や東電から説明を聞いた事が無い。何故説明しないのか?隠蔽していると言わざるを得ない。規制庁は海洋放出後の拡散をどう評価したのか?

 注1: IAEA報告書の41ページ

The Task Force noted that applying these conservative concentration limits to discharges is resulting in the need for dilution of the ALPS treated water prior to discharge, and that care should be taken not to imply that dilution is performed for the purposes of radiation protection and safety (the REIA considers the amount of radioactivity released into the environment in a year rather than the concentration at which it is discharged). The Task Force acknowledged that Japan might choose to dilute discharges for other reasons (e.g., to keep local radionuclide concentrations low at the point of discharge, or to manage reputational risks) and advised that the reasons for dilution should be clearly stated.

日本語訳:

タスクフォースは、これらの保守的な濃度制限を放流に適用することにより、放流前に ALPS 処理水を希釈する必要性が生じていること、および希釈が放射線防護と安全の目的で行われていることを暗示しないよう注意する必要があることを指摘した(REIA は、放流される濃度ではなく、1 年間に環境中に放出される放射能量を考慮している)。タスクフォースは、日本が他の理由(例えば、排出地点での放射性核種濃度を低く保つため、 あるいは風評リスクを管理するため)で排出を希釈することを選択する場合があることを認め、希釈の理由を 明確に示すべきであると助言した。


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