甲状腺被ばく線量モニタリング実施マニュアル案に対する意見提出
「甲状腺被ばく線量モニタリング実施マニュアル案に対する意見(パブリックコメント)を提出した。但し、マニアル案はほとんど読んでいない。(読む気になれない)
所管省庁・部局名等: 原子力規制庁 長官官房放射線防護グループ 放射線 防護企画課
提出意見:
1. パブリックコメントにかける前に国民に対し
1)福島で甲状腺被ばく線量測定ができなかった(恣意的にしなかった)原因と 反省を明らかにすること。
2)このマニアルの概要を国民の前に説明する事。(パワーポイント作成は必 須)
2. この長文のマニアルを読んで誰が理解できるだろうか? もう少し理解できるように、概要をパワーポント等でまとめ自治体職員が理解で きるようにすべきだ。緊急時にこの長文マニアルは読めないし、理解できない。
3. マニアルを作成する前に基本は被ばくをさせない事が最重要。 その為には以下を実施すべき。
1)避難計画の作成(現状のインフラで100万人規模の住民を一斉に避難する 事は不可能
2)安定ヨウ素剤配布基準の見直し(PAZ住民は避難できない!)
3)安定ヨウ素剤を誰が、いつ、どのように配布するのが決まっていない状況 で、被ばくを前提とするマニアルの作成は順番が逆。このマニアルは被ばくを前 提に作成されている。
4. 甲状腺測定と体表面のスクリーニング、そして安定ヨウ素剤の配布、避難計画の提出を同時に一体的な作成が必須。
5. 上記の条件がそろっていない状況で、被ばくを前提とするマニアルは次のス テップ。パブリックコメント募集を撤回すべき。
6.このマニアル作成にあたり、検討に参加した外部専門家4人の中で鈴木元氏 はUNSCEAR2020/2021報告書作成にあたり、内部被ばく線量を無かった事 にした人物で、更に福島県の甲状腺評価部会の座長にもなっている。 このような公正・中立に欠ける外部専門家の元で作成したマニアルは信頼できな い。撤回すべきだ。
鈴木元氏がUNSCEAR2020・2021レ報告書作成に当たり、どう関与 してきたかは以下をご覧ください。
【UNSCEAR2020/2021報告書に日本側はどう関与したか(前半)】
https://nimosaku.blog.ss-blog.jp/2023-02-12
【UNSCEAR2020/2021報告書に日本側はどう関与したか(後半)】
https://nimosaku.blog.ss-blog.jp/2023-02-13
7.被ばく線量の推定方法は『今後の検討課題』としている事は、今まで鈴木元 氏らが検討してきた事は間違いだったのか?これでは対策にもならないし、マ ニュアル作成の基準値設定としても科学的根拠に欠けている。
8.『今後の検討課題』では、何の為の測定なのか、住民の健康に係る評価にはならない。
9.本人に実測値はその場で伝えなければ、目的達成にはならないし、その時に 基準や健康への被害の可能性、今後の健康管理等の資料も渡すべき。 これが医療行為(検診)の位置づけにあたるならば、検診結果を本人に伝える事 は当然の事。一体何の為の測定なのか?本末転倒になっていないか? ⇒医療法で問題にならないのか(医療行為のうちの検査結果データは本人に開 示が基本)
10.3週間以内を基本はこれで良いか(ヨウ素の線量値が4分の一程度以内に なる2週間程度を基本目標とすべきではないか? 3週間以内はマストにする必要があるのではないか?(福島の場合は1か月以上 も過ぎ、測定無意味としてしまった経緯あり)
11.避難所の規模(避難者数)と測定器(測定箇所)の数(避難者の数と2週 間以内から換算)の規定も必要。
12.19歳以下にした根拠は何か?福島では多くの高齢者が甲状腺がんになっ ている。一般的に甲状腺がんは高齢者の方が多い。 測定の優先順位は必要だが、全員測定すべき。 ヨウ素剤配布の40歳未満との整合性が取れない?ヨウ素剤は高齢者も摂取して 良い事になっている。
13.避難所の混乱が理由として19歳以下にしたすれば本末転倒であり、測定 不可能なら原発稼働を止めるのが筋だ。
14.PAZ(原発から5km圏内)住民は測定不要とした根拠は何か?PAZ住民は 取り残される可能性大。政府を信用しないPAZ以外の住民が我さきに避難し、道 路は渋滞しPAZ住民は取り残される。東海第二はまさにその典型。(100万人 以上が一斉に避難する。信頼失った政府や県の指示には従わない。個人の判断で 行動。特に高速道のインターに向かって車は渋滞し、PAZ住民は避難できない)
15.サーベイメータでの0.2μSvと甲状腺等価線量100mSvとの関係式を 明示すべき。
16.BG値をどう測定するのか?福島の1080人の例のように、BG値が大き すぎて測定結果がマイナスにならないか? →被ばく無かった事にされてしまっ た。
(このデタラメな測定結果をUNSUEAR2020/2021レポートの根拠とされ てしまった。これを主導したのが自らの失態を隠そうとUNSCEARに強く関与し た鈴木元氏と元放医研の明石眞言氏)
17.BGが0.2μSv/hの場所では0歳児の100mSvの甲状腺被ばくを測定 する事は不可能。放射能で汚染された避難所では0.2μSv以下の測定場所を探 すのは不可能。どうやって正確に測れるのか?
18.プルームが来襲してきた場合の長時間屋内退避した場合の屋内退避効果は 木造建築の家屋ではほとんどない。プルームが去ってからの窓を開けずに屋内に 留まると逆に内部被ばくが屋外よりも大きくなる。その事実がこのマニアルでは 検討されていない。UNSCEAR2020/2021報告書では鈴木元氏が屋内退避効果は 0.1から1.0の中間の0.5を採用し、内部被ばくを矮小化した。
詳細は以下ご覧ください。
【UNSCEAR2020/2021報告書に日本側はどう関与したか(前半)】
https://nimosaku.blog.ss-blog.jp/2023-02-12
19.すでに甲状腺に取り込まれたヨウ素に対する対処方法は無いのか?(24 時間以内ならば安定ヨウ素剤を飲めば少しは効果あり?)基準を超えた住民には 今後の健康管理についてもマニュアルを配布すべき
20.除染基準を40,000cpm(当初の基準の3倍)にした根拠は何か?計算式を提示すべき。40,000cpmは300mSv相当で高すぎないか?なぜ、当 初の13,000cpm(100mSv)ではなぜダメなのか?その半分の 7,000cpmぐらいにすべきではないか?
21.福島での事故時に体表面の除染の基準値を13,000cpmから 100,000cpmに上げてしまった基準との整合性は?高被ばくしながら、除 染もしてもらえなかった住民への謝罪と反省はないのか?
22.避難所の混乱を避ける為と言うなら、本末転倒。住民の健康を守る事を目的とするなら、あるべき基準(13,000cpmまたは半分の7,000 cpm)にすべき。できないなら、原発の稼働はあってはならない。
23.除染とは具体的に何を実施するのか?除染の方法も基準化し提示すべき。
福島県・検討委員会/評価部会へ「要望書」提出
1.Tsuda, Miyano & Yamamoto(2022):Environmental Health,21:77
ご検討・ご回答いただきたい大論点は以下の 3 点です。
この結果は項目3とも一致し、UNSCEAR の甲状腺線量推定値の二桁以上の過小評価をさらに裏付けるものです。この事実からも「被ばく量が少ないので甲状腺がん多発は被ばくが原因とは考えにくい」とするこれまでの見解の再検討を要望します。
この事実からも「被ばく量が少ないので甲状腺がん多発被ばくが原因とは考えにくい」とするこれまでの見解の再検討を要望します。
人体への悪影響の中には、もちろん、放射線被ばくも含まれています。医学研究者になって以来、放射線被ばくによる健康影響に関しては、私自身、研究生活の早期から研究対象の 1 つとして取り組み、この約 40 年間、研究の発展を追ってきました。そして多くの医学研究者がそうであるように、国際的に研究者や専門家により共有されているこの分野の医学知識にも通じるべく努めております。
それだけでなく、この「福島特集」の掲載諸論文での著しく均衡に欠いた引用の仕方にも気づかされます。それぞれの関係者、執筆の先生方が十分読みこなしておられない文献を根拠にしておられるようで、放射線被ばくによる健康影響を研究するために必要なはずの世界で共有されている情報が、あまり伝わっていないようです。
例えば、福島県の基本調査の要望書に毎度のように、またこの検討委員会で何度も話 題になった UNSCEAR 報告書の「100mSv 以下の被ばくではがんの多発に証明がない」という類の主張もまた、科学的根拠に反する誤った言明です。この「100mSv」という言い方については、以前から科学的根拠に反すると批判されてきており、すでに多くの論文により反証できておりました(例えば、Stewart 1958, Pierce 2000,Mathews 2013, Grant 2017 など)。
さらに、データの著しく蓄積は進み、最近では、アメリカ国立がん研究所から出された、放射線被ばくによる人体影響研究者らによる入念なメタ分析(多くの人体影響に関する原著論文を集積して定量的にまとめた系統的総説論文)の結果は(Hauptmann 2020)、明瞭に UNSCEAR による「100mSv」を反証しています。
これでは、検討委員会のご判断も大きく偏った影響を受けかねないと判断しました。これらの問題に関して、今回、UNSCEAR の報告書の解説書としてまとめたものを、ご参考のために以下からダウンロードできるようにしてあります(「UNSCEAR2020/2021 報告書・医学関係の問題点に関する簡略解説」は、現在こちらからダウンロードできます:https://x.gd/VHEXK)。
UNSCEAR は1950 年代に放射線の人体影響を問題とする科学者に対抗する形で、原子力推進の諸国からの代表を推薦するという設立経過がありますので、福島県の公衆衛生に対する関心が欠けているようにも見えます。
万一、どの情報が正しいのか分からなくなった場合は、医学的根拠、科学的根拠をたどってお互いに議論をすれば良いだけです。しかし、残念ながら現在、日本の医学会においては、医学分野全体からすると放射線健康影響というテーマが非常に限られたマイナーな存在であることもあり、その役割を十分に果たせていません。
このようなギャップを埋めるために、本書簡に添付した「UNSCEAR 報告書の解説書」以外に、私自身は、この問題に関心がおありの方々のために、公開での議論や紙上討論もお受けいたします。見解を異にする専門家同士が医学的根拠を持ち寄り、議論を交わす機会がないまま、このようなギャップが続くことは、検討委員会の審議やひいては、そして何より、福島県の皆さんに健康上の悪影響を及ぼしかねず、良い影響などありません。
すでに、このような問題に取り組む専門家が集まる国際環境疫学会 ISEE は、3年半前の2015 年 10 月に私どもが出版した論文(Tsuda 2016a,b)とそれを報告した早期公開 Early Release による警告を受けて、学会理事らが環境省と福島県に公式書簡を送っています。
そして、この共有されている情報の方が、放射線被ばくに関する研究の第一線において成果を出している研究者たちの見解なのです。
「UNSCEAR 報告書の解説書」(前述:https://x.gd/VHEXK)を御一読のうえ、ご検討の参照にしていただけましたら幸いです。
しかし、中間まとめが出された 2016 年以降、約 7 年経過しても、ほとんど何の対策も行われていません。因果推論ばかりで公衆衛生的対策が行われてない事態は、絶対に避けなければならないことを考えると、非常に残念な事態が現実のものとなっています。
漫然と会議だけを延々と続けている検討委員会の現状は、社会的に肯定できるようなものではありません。