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ALPS汚染水海洋放出に関する問題点と疑問(後半)

一部追記(◆部および★部)し再掲します。(前半と後半に分け掲載)

【ALPS汚染水海洋放出に関する問題点と疑問(後半)】
 
              第1版2023年6月4日
                                        第2版2023年6月11日(◆部追記)
              第3版2023年6月21日(★部追加)
                                                第4版2023年6月25日(▼部追加)

前半からのつづき・・・(前半部分は以下ご覧ください)
【13.小中学校へのチラシ配布について】
復興庁と資源・エネ庁が汚染水の海洋放出は一方的に安全だとする都合の良い部分だけを取り上げた内容のチラシが小・中学校に配布された。各自治体の教育委員会で問題になっている。政治的なチラシを教育現場に持ち込んだ前代未聞の事件。
復興庁と経産省が文科省を威圧?して、放射線副読本と一緒に「安全宣伝チラシ」を送りつけたもので、地元市町村の反対の根強さを浮き彫りにする結果になった。
これでは経産省の信頼は得られない。福島県内はじめ全国での公聴会を開催し説明したらどうか?詳細は以下のブログをご覧ください。
岩手県、宮城県、福島県の実態調査を河北新報が実施した。以下がその記事の一部を転載。
南相馬市教委は市議の指摘を受け、市内の中学校に確認した。担当者は「事前の連絡と説明は必要だろう」と憤り、同市の中学校長は「処理水海洋放出は(議論が分かれる)微妙な問題。南相馬は現場そのもので、敏感にならざるを得ない」と話した。

いわき市教委は「学校に直接送るなんて聞いたことがない」と困惑。「さまざまな意見がある問題で、県教委の判断を仰ぐ必要がある」として、各校に学校での保管を依頼した。
「8日に県から問い合わせがあり、初めてチラシの存在を知った」と明かすのは福島市教委。配布していない学校には、保管するよう通知を出した。

福島大共生システム理工学類のG准教授(環境計画論)は「廃炉に関する様々な課題のうち、処理水放出の問題だけに焦点が当てられた『焦点ずらし』だ。処理水の放出が既定となっており、他の代替案や放出に反対する意見を取り上げていない点も問題がある」と指摘。「多様な視点で議論する芽を摘み、異論を封じ、政府の公式見解を一方的に伝えるものだ」と評した。

岩手県教委は、8日にあった県立学校の校長会で、チラシの内容や配布方法が議論を呼んでいるとして、「丁寧な対応をお願いする」と各校へ依頼した。処理水の海洋放出を巡り、風評被害を不安視する沿岸自治体や県漁連は国に反対の意思を伝えてきた。

野田武則釜石市長は「(岩手県内の)三陸沿岸の自治体はどこも海洋放出に反対だ。安全だと言っていた原発で事故が起きた。不信感を払拭することなく、海洋放出を前提に物事を進める姿勢に疑問を抱かざるを得ない」と批判した。

2月20日の河北新報記事
「原発処理水は安全」国が学校にチラシ 被災3県、配布見合わせも
同じく河北新報 2月20日記事
『慎重な対応必要』『微妙な問題』『国の姿勢に疑問』 戸惑う被災3県
放射線の副読本と一緒に配布されたのが以下のチラシ。①、②のチラシ230万枚が昨年12月から、教育委員会を通さずに、放射線副読本と一緒に全国の小中学校に直接送られた。

① 経済産業省資源エネルギー庁の「復興のあと押しはまず知ることから」
② 復興庁の「ALPS(アルプス)処理水について知ってほしい3つのこと
【14.汚染水濃度の上昇問題】
1)ここ数年間の、トリチウムを除く核種の地下水濃度の急上昇(例えば、No.1-6孔では2018年から2022年末までに、全ベータ:100,000⇒1,300,000 Bq/L(13倍)、90Sr:100,000⇒700,000 Bq/L(7倍)、134+137Cs:10,000⇒400,000 Bq/L(40倍))について、
①その原因はどこにあると考えるか?
②事故からの時間経過に伴って、デブリの変性、変質が始まっているのではないか?
③東電は規制庁にこの重大問題・現象を提示し、問題点を議論しているのか?

【15.遮水壁効果の問題】
1)汚染地下水の行先として、港湾や港湾外の外洋への漏洩が考えられるが、どう評価しているのか?
もし、護岸遮水壁、凍土遮水壁で汚染地下水がシールド出来ているとすれば、港湾や外洋において放射性セシウムで汚染された海水や魚介類(2016年以降2022年末までの海水:港湾遮水壁前1~100 Bq/L《ほとんどが検出限界値以上》、2017年以降2022年末までの港湾内魚介類:2~2000 Bq/kg《ほぼ90%以上が検出限界値以上》)が見つかる原因は何か?

2) 2017年以降、港湾の海水と魚介類の放射性セシウム濃度は殆ど減少していない。護岸遮水壁と凍土遮水壁の設置は無意味だったのではないのか。他の対策をしないのはなぜか?(遮水壁を設置しなければもっと酷い汚染が起きていたと考えるのか?)
 【16.米ウッズホール海洋研究所のケン・ブセラー博士のコメント】
 
「福島汚染水、放流でなく60年貯蔵すればトリチウム97%消える」
          米ウッズホール海洋研究所のケン・ブセラー博士
 
福島原発事故地域に保管中の放射性物質汚染水を海に放流するよりも60年間保管することを検討すべきだという指摘があった。取り除くことができない放射性物質のトリチウム(三重水素、H3)は半減期が短いため60年経過すれば97%消えるからだ。
米ウッズホール海洋研究所のケン・ブセラー博士は7日(現地時間)、科学ジャーナル「サイエンス」の寄稿「福島の放流」で、福島原発事故汚染水を海洋に放流するという日本政府の方針に対して問題点を指摘した。
 
1)100万立方メートルを超える放射性汚染水
現在、福島原発には1000個以上のタンクに100万立方メートルを超える汚染水が貯蔵されていて、最近も一日に200立方メートル近い汚染水が出ている。汚染水には高度水質浄化システムでも除けない放射性物質のトリチウムが含まれているが、日本政府ではこれを海洋に放流する方向で進めている。
 
ブセラー博士は「トリチウムは半減期が比較的短いうえ、海洋生物や海底堆積物に容易に吸収されず、害が少ないベータ放射線を放出するため、問題は少ない方」とし「全世界の原発からも排出されている」と明らかにした。
2)汚染水保管地域を他の地域にまで広げて保管すべき
しかしブセラー博士は汚染水を海洋に放流する方法だけがあるのではなく、時間が解決してくれると指摘した。ブセラー博士は「トリチウムは半減期が12.3年であり、60年間保管すればトリチウムの97%が崩壊する」とし「60年間に貯蔵量は現在の4倍に増えるだろうが、汚染水保管地域を他の地域にまで広げて保管すればよい」と提案した。
 
3)「トリチウムだけが問題ではない」
ブセラー博士は寄稿で、特に汚染水の中のトリチウムだけを考えるべきではないと警告した。2018年に東京電力が公開した資料を見ると、汚染水にはコバルト60やストロンチウム90のような放射性物質が含まれている。東京電力自体も汚染水の70%はこれら放射性物質除去のために2次処理をしてこそ放流できると評価した。
 
4)放流する前に放射性物質の除去データを公開すべき
ブセラー博士は「放射性物質は(核種により)海洋でそれぞれ異なる作用をする」とし「炭素14やコバルト60、ストロンチウム90など同位元素は半減期が長く、海底堆積物や魚類への親和力がはるかに高く、人間と環境に潜在的にはるかに危険だ」と強調した。例えば炭素14の場合、トリチウムと比較すると生物濃縮指数が5万倍にのぼり、コバルト60の場合はトリチウムに比べ海底堆積土に30万倍もよく結合する。このため汚染水を放流する前に2次処理を通じてこれら放射性物質がどれほど除去されたかを公開する必要があるということだ。
 
また汚染度がまだ公開されていないプルトニウムも濃度が公開されなければいけない。プルトニウムの場合、冷却水に入っている可能性があるが、2011年の事故当時、大気中に多くの量は放出されていないと把握されている。
 
5)「放流時には独立機関のモニタリングが必要」
ブセラー博士は「汚染水の放流は回復中の地域の漁業にマイナスの影響を及ぼしかねないため、大衆の心配を無視してはいけない」とし「放流される場合、海水と海洋生物、海底堆積物のモニタリングに地域の漁民と独立的な専門家が参加しなければいけない」と忠告した。2015年半ばから福島周辺で捕獲された魚のセシウム濃度は1キロあたり100ベクレル(Bq)を超過した事例がないという。
第三者機関(例:福島大学+東京大学+NPOたらちね+福島県漁業組合等で構成)されたが必須)
 
※ブセラー博士は2011年の東日本大地震の福島原発爆発事故当時から放射性物質の海洋拡散を研究している。ブセラー博士は2011年6月から専門家チームを構成し、原子炉で生産されたセシウム(Cs)134とセシウム137が黒潮海流に沿って移動する過程を追跡するために最初の国際研究クルーズを実施した。また、北米太平洋沿岸で放射性物質の移動をモニタリングする米国・カナダの市民科学者ネットワークを構築した。
                                          
【17.汚染水の行き先と収支】
1)地下水の高濃度汚染(例えば、No.1-6抗1,300,000 Bq/L、90Sr:700,000 Bq/L、134+137Cs:400,000 Bq/L)について、その起源と行先についてどう考えるか。
ドレンによる地下水の回収と汚染地下水発生の収支は整合しているのか。そもそも、炉心への冷却水注入量と回収量の差(それが圧力容器、核の容器からの漏洩分:注)はどのように見積もっているのか?
注:東電が公表すべきものが公表されていない
◆2)処理水や汚染水の構内におけるフローチャートを明確にすべき(開示要求)。
過去そして現在、構内から構外へ放射性物質がどのように動いているのか(動いている場所と量と濃度と方向:フラックス)を明確にすべき(開示要求)。


【18.全ベータ】
1)汚染地下水に含まれる高濃度ストロンチウム90(全ベータ)の起源はどのように考えるか。放射性セシウムとストロンチウム90の濃度が炉工学的には整合していない(核分裂収率と半減期は90Srと137Csはほぼ等しいので、地下水の汚染源になったはずのデブリでは両核種の比はほぼ1になる)が、これはデブリ形成の際の溶融温度の差で両核種が分別したと考えてよいのか?
高温で溶融したデブリでは放射性セシウムは大気に揮発してデブリ中で枯渇したが、低温溶融では残っている。ストロンチウム90は全てのデブリに残留している。フクイチ構外の環境でストロンチウム90濃度が異常に低いのはそのためか?
2)現在、地下水によってデブリから溶出、漏洩していると考えられる全ベータ(ストロンチウム90と放射性セシウム)については放射線防護上、リスクはないと考えているのか。リスクがあるなら早急な対策が必要ではないのか?
 
★【19.海洋放出で失うものは膨大。得るものは廃炉という幻想のみ】
 
海洋放出を強行した場合に、日本政府、日本人が失うものは膨大。
①日本の民主主義。②福島県民の更なる苦しみ。③中国、韓国、太平洋諸国との政治問題に発展。韓国や中国からの賠償金問題へ発展の可能性。日本政府への信頼。④全世界の消費者の健康被害。 ⑤世界中の漁業や観光業の生業が奪われる。⑥日本の漁業と観光は壊滅。⑥地域や国際間の分断等・・・
 一方得られるものは『廃炉が進む』という幻想だけ。廃炉の定義も無い。デプリの取り出しもすぐには困難。汚染水を止められなかった反省もない。汚染水も減少し、ゼロにできればタンクの増設は不要。用地が足りなくなるならタンク用地拡大すれば解決するも、12年間放置。汚染水陸上移動や海上移動の規制改訂も放置。その間GX法制定で原発復活。原発発電コストアップで電気料金高騰と原発事故で日本は破綻と破滅の道へ・・・
 
数年かけて検討した専門家会議メンバーも素人ばかり。事務局のシナリオ通り。すべて民意無視の茶番劇!本件に対するご見解を聞かせてください。


★【20.廃炉は幻想ではないか?】
大量のデプリを完全に取り出せる技術的目途も立っていない。仮にデプリが取り出されたとしても、取り出したデプリが敷地内に長期保管されるのであれば、『廃炉』からはほど遠い状態。これだけ見ても40年廃炉(注)はイメージ戦略(幻想)でしかない事は明らか。

①デプリ取り出し技術はいつ完成するのか?②取り出したデプリはどこで保管するのか?③廃炉の定義はどのような状態を指すのか?④現在の廃炉進捗は何%と捉えているか?
 
 
注:当初30年から40年といっていた廃炉時期を40年(2051年)としているようです。

 【21.札幌でのG7共同声明の誤訳(改竄)の撤回・修正について】(朝日の記事参照)

西村大臣の改竄発言にドイツのレムケ大臣が猛反発しています。国際問題化しています。
この事はいずれ中国や韓国でも報道され問題化してきます。ドイツからの正式な修正依頼も提出される可能性もあります。

このような発言は故意にされています。現在の政府(経産省や環境省等)が実施している事は、あまりに国民や福島県民を愚弄しており信頼できようはずはありません。
是非、真摯な対応をお願いいたします。

朝日新聞記事概要が以下

『4 月に札幌市で開かれた主要 7 カ国(G7)気候・エネルギー・環境相会合で採択された共同声明をめぐり、環境省が公表している日本語訳が間違っているとして、全国約 150の市民団体らが 12 日、環境相と経済産業相に撤回を申し入れた。回答期限は 18 日。共同声明は英文で A4 計 36 ページ(日本語訳は 32 ページ)で、4 月 16 日に採択された。

このうち東京電力福島第一原発から出る処理水の放出や除染土の再利用について言及した 2 カ所について、市民団体「放射線被ばくを学習する会」などが誤訳を指摘している。処理水について、環境省がホームページで公開している「仮訳」では「廃炉及び福島の復興に不可欠である多核種除去システム(アルプス)処理水の放出」とあるが、英語の原文では「廃炉及び復興のために不可欠」なのは「(処理水放出が)IAEA(国際原子力機関)の安全基準や国際法に準拠して実施されること」と「放出が人や環境に害を及ぼさないこと」のように読める。

除染土の再利用についても、仮訳は日本の取り組みが「オープンで透明性をもって、国際社会との緊密なコミュニケーションをとりながら進められている」と評価したのに対し、英文では、日本に国際社会との連携をとりながら、透明性をもって取り組みを進めることを推奨しているように読める。』

https://www.asahi.com/articles/ASR5Z6TNMR5YUGTB00L.html



 




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ALPS汚染水海洋放出に関する問題点と疑問(前半)

一部追記(◆部)し再掲します。(前半と後半に分け掲載)

【ALPS汚染水海洋放出に関する問題点と疑問(前半)】 
              第1版2023年6月4日
                                        第2版2023年6月11日(◆部追記)
              第3版2023年6月21日(★部追記)
                                        第4版2023年6月25日(▼部追加)


経産省、東電への質問事項・確認事項を以下の通りまとめてみました。
今後の経産省や東電との交渉等に参考として頂ければ幸甚です。
 
【1.約束違反】
1) 東電と政府は福島県漁連の「タンクに溜まっている水は国民の理解がないかぎりいかなる処分も行わない」との要請に対し、「関係者の理解なしにはいかなる処分も行わない」と約束した。しかし政府は海洋放出方針を決定してから、関係者の理解を得ます。説明を尽くしますと言っている。明らかに約束違反ではないか。

◆2)『関係者』とは誰の事か?最も健康に被害を受けるのは消費者のはず。まず関係者には消費者を加えるべき。また関係者の『理解』とは消費者を含めたすべての関係者の『納得』と『同意』と理解する。同意なく海洋放出を決定したのはまさに道義にも反するは約束違反であり、消費者を含む国民への反逆ではないか?これでは国民の信頼は得られない。

【2.世論は海洋放出反対・公聴会の開催を!】
1)福島県内の多くの自治体は海洋放出に反対している。2020年2月の福島県内の世論調査でも57%が海洋放出反対している。
GXの原発推進も含め、日本では政策決定の在り方に民主主義が徹底的に欠けている。海外では市民の意見を聴いて原発政策を決定している。まずは福島県内数か所で経産省主催の公聴会を開催したらどうか?

【3.なぜ汚染水は増え続けるのか?】
1)なぜ汚染水は増え続けるのか?大金を投資しつくった凍土壁は役立っていないのか?コンクリートのような工法で広域の止水壁を作って地下水を止めるべきとの専門家の意見もでているが、なぜ行わないのか?凍土壁の失敗を認めたくない為に汚染水が増え続け、海洋放出するとすれば本末転倒ではないのか

【4.処理水の定義と測定結果の情報公開】
1)政府による処理水の定義は『トリチウム以外の放射性物質が基準を下回っている事』となっている。タンクに留められている7割近くは基準値を超えている(ストロンチウム90、ヨウ素129、セシウム137、さまざまなプルトニウム等)ので、処理水ではなく『汚染水』という事で良いか?すべてALPS処理水と言っている事は情報操作ではないか?

2)すべてのタンクについて62核種とトリチウム、そして炭素14の測定結果が公開されていない。(3つのタンク群のみ公開)公開されていないと言う事は汚染水の全容がつかめない状態で、海洋放出ありきで良いのか?全容をつかむまでは、海洋放出は止めるべきではないか?また未公開データはいつまでに公開するのか?

【5.ALPSの機能について】
1)タンク保管の7割は汚染水。ALPSでの処理水は3割。ALPSは「使用開始前検査」を受けていない試運転状態。法的には「仮設」。ALPSのフィルターが破損したり、信頼性・安定性に欠ける。基準を超える7割の汚染水の割合が減っていないが、ALPSが正常に機能しているのか?

【6.トリチウムの危険性は有機結合型OBT】
1)トリチウムの危険性はOBT(有機結合型トリチウム)にある。HTO(トリチウム水)は生物体の中に入ると炭素などの有機物と結合して有機結合型トリチウム(OBT)に変わる。細胞はOBTを水素原子とみなし高分子を構成する。ところがOBTは核壊変しヘリウムに変わってしまう。ヘリウムは結合を担う能力は無いので、OBTを使った高分子結合は壊れ、細胞は破壊される。これがトリチウムの危険の実態。
更にOBTはHTOに比べ20~50倍滞留時間が長い。OBTは染色体など重要器官で使われ、十分DNAを傷つける。


2)トリチウムOBTの人体への影響は未だに、未確認。論文も無い。有機結合型トリチウム(OBT)の人体(細胞レベル)への影響に関する論文等は無いはずです。(短時間の魚類への影響は存在するが完全ではない?)。論文があるなら提示ください。
OBTに関してはIAEA、東電、規制庁はどのような見解も示していない。


【7.ICRPリスクモデルの欺瞞・線量係数矮小化】
1)ICRPのリスクモデルでは電離エネルギーは体全体に、または臓器や組織に、また細胞全体に平均・均一に負荷すると仮定。しかし実際の内部被ばくでは、エネルギーは局所・部分的に集中的に負荷し、細胞を、臓器を破壊していく。ICRPの平均化概念は内部被ばくでは全く起こり得ない。ICRPのリスクモデルでは全く想定していない”元素変換(核壊変)による細胞破壊が起きる。


2)ICRPのリスクモデルはエネルギー量(物理量)だけを問題にしている。人体の細胞にどのような影響をあたえるかという細胞科学的観点、あるいは体内に入った時にどのような化学的反応をみせるかといった化学的な観点は一切無視。徹底的に放射線物理学の観点からしかみていない。科学的にはいびつな体系。


3)『トリチウム(HTO)無害論』はICRPの1Bq換算係数(1.8×10⁻⁸msV)が実情とはかけ離れている事。例えば年間100万BqのHOTを摂取しても18μSvと小さい。朝日や毎日のトリチウム無害論もすべてこの換算係数からでている。ICRP内部でもこの換算係数が科学的に妥当ではないとの意見が何度となくでている。しかしICRP勧告は頑として修正しない。しかしこの換算係数は5倍~10倍程度が妥当との専門家(ICRPの専門家も含め)の意見がある。


◆4)6月9日に開催された日本リスク学会シンポジウムで上記3)に関する小生からの質問に対しICRPの甲斐倫明委員がICRPの線量係数の矮小化を認め、すでに新しいパブリケーション(Pub.150)で修正されているとのコメントを得た。しかしながら日本政府は未だに従来の線量係数を使用し、内部被ばく線量を矮小化している。


【8.健康被害の実態について】
1)カナダの重水炉型原発周辺では、排水されるトリチウムで健康被害を指摘している調査結果や論文がでている。特に激しく細胞をつくる4歳以下の子ども・幼児・乳児・あるいは胎児にその被害は集中した。


2)日本の玄海原発周辺でも住民の白血病が多発している調査結果がある。1998年~2007年の調査では玄海町の白血病による死者数は人口10万人あたり30.8人(前半の5年平均)~38.8人(後半の5年平均)と全国平均(5.4人~5.8人)の6倍~7倍。また原発から15km離れた唐津市でも全国平均の3倍程度。魚介類、飲料水、空気中に浮遊するHTOが原因と考えられる。


3)厚労省が発表した平均寿命でワースト10には、下北半島の六ケ所村、東通村、むつ市等核燃料サイクル工場が設置されている周辺の自治体の寿命が短い。これはトリチウム海洋放出に関係していないか?トリチウムに汚染された魚介類、飲料水、空気中に放出されたトリチウムを吸入した事と関係あるのではないか?
ないとするなら短寿命の要因は何か?


【9.燃料棒に直接触れた汚染水の海洋放出の前例はない】
1)「ALPS処理水と、通常の原発排水は、まったく違うものです。ALPSでも処理できない核種のうち、11核種は通常の原発排水には含まれない核種です。通常の原発は、燃料棒は被膜に覆われ、冷却水が直接、燃料棒に触れることはありません。でも、福島第1原発は、むき出しの燃料棒に直接触れた水が発生している。処理水に含まれるのは、“事故由来の核種”です」(山本拓議員)
溶融燃料と接触した水の海洋放出は世界的に前例があるか?前例がないなら安全だと言える確証はまったくない。 デプリに触れた汚染水の海洋放出はあり得ない。

【10.トリチウム以外の放射性核種や溶融した物質の検証がされていない】
1)政府は通常の原発でもトリチウムが発生し、海洋放出しているから、基準値以下に薄めれば問題ないとの説明をしているが、福島第一の場合は溶け落ちた核燃料に触れた水である事。政府はこの問題をトリチウムだけにファーカスしている。
海洋放出基準は放射性核種に限定し、核分裂した安定テルル、溶解した金属特にステンレス鋼材やジルコニウム,スズ等、さまざまな有機物、コンクリート、腐食酸、硫酸還元菌、放射性炭素等は含まれていない。
本件について経産省、東電、IAEA,規制庁はどのように判断しているのか?

【11.IAEAと日本政府は出来レース】
1)日本政府はIAEAを第三者機関の評価としていますが、IAEAと日本政府は海洋放出ありきで日本政府と協定を締結しているとすれば、公正・中立な評価は不可能。
 『IAEAと日本政府は出来レース』
原発推進のIAEA以外の第三者機関の査察も受けるべきではないか?
※IAEAの立場は福島第一の汚染水の海洋放出を禁止すれば、世界中の原発を止めざるを得なくなる為、福島第一の汚染水の海洋放出を認可するしかないという立場。
(IAEAは原発推進の立場)

【12.汚染水モニタリングに関する疑問】
米ウッズホール海洋研究所のケン・ブセラー博士が汚染水問題に関する意見を述べている。その意見と東京電力が出している『処理水の話。これからの話』の冊子を読んで汚染水のモニタリングに関する疑問が以下。(質問16と関連)

1)ALPSは7種類18塔の吸着塔を通しているが、トリチウムを除き62種類核種が本当に告示濃度限界未満まで取り除かれるのか?
『炭素14やコバルト60、ストロンチウム90など同位元素は半減期が長く、海底堆積物や魚類への親和力がはるかに高く、人間と環境に潜在的にはるかに危険だ」と強調。
例えば炭素14の場合、トリチウムと比較すると生物濃縮指数が5万倍にのぼり、コバルト60の場合はトリチウムに比べ海底堆積土に30万倍もよく結合する。このため汚染水を放流する前に2次処理を通じてこれら放射性物質がどれほど除去されたかを公開する必要がある』と。
 

2)『放流される場合、海水と海洋生物、海底堆積物のモニタリングに地域の漁民と独立的な専門家が参加しなければいけない』と言っているが、JAEAは独立した第3者機関といえるのか?『福島大学』や他大学、市民団体『たらちね』や『福島県漁業組合』、福島県等も参加させてはどうか?
 

 3)トリチウムを海洋放出する場合に 立坑内でトリチウムを1500Bq/Lまで希釈するとしているが、1回毎に立坑内満水後放流し、空にしてから次の希釈をしないとモニタリングの正確性に欠ける事になる。そこで以下質問。
①どのような方法で海洋放出するのか? 
②この濃度確認はJAEAが実施するのか?
 この測定には第三者機関が実施すべきではないか?
③満水になった立坑内の汚染水は1日何回放出するのか?


後半部分に以下に続きます。
https://nimosaku.blog.ss-blog.jp/2023-06-12-1

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